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黒に塗りつぶされゆく視界の中、彼女はただ祈っていた。


世界と相容れない異物を取り除きに来ただけの筈だった。それは彼女の仕事であり、そもそもの存在理由である。故に彼女にはそれを十分に達成するだけの力がある、筈だった。
然れど、禁忌を名乗ったそのイレギュラーは明らかに常のものとは違っていた。

強力無比な力。神である彼女や、彼女の片割れと同等の力。イレギュラーもまた、彼らと理を異にする「神」であったのだ。

彼らが役割の為に双つに別った力を身一つに宿したその神は、単純に考えても彼らより強く、また性質の上でも彼らの力に対して優位であった。
創造と破壊――1を創り1を滅す彼らの力に対して、その神の持つ力は変革。1を0にも100にも変えてしまえる力。
それは彼らにはない理。
かの神が力を振るえば振るう程、彼らの理は壊されていく。理が壊れれば、彼らが創り護ってきた世界は崩壊する。彼らはそれを到底受け入れられなかった。

然れど。
片割れである創造神はかの神に攫われ、破壊神たる己は力の及ばぬ次元の狭間へと囚われた。最早彼女が世界に出来ることはあまりにも少ない。


世界への道を閉ざされゆく中、彼女はひたすらに祈っていた。
片割れが連れ去られる直前に彼女へ託した最後の力。新たな生命を映し取る為の扉。その扉の先へ彼女は祈り――助けを乞うた。



彼女が望むのはかの神と同じ変革の力。
彼女と彼女の片割れの理にはない、かの神を打ち破る力。
片割れが意図した者ではないかも知れないと思いながら、彼女はそれ以外にこの世界を護る術を思いつけなかったのだ。

破滅を齎すものを破壊する。ただ、それだけ。



その祈りは次元を超え、運命を打ち破る者たちを引き寄せる。






「それが貴女の望みなら、私はきっと力になれるでしょう」


助けを求めた彼女すら与り知らぬ異界の地で、SOSを受け取った少女が一人。
祈りと共に流れ着いた創造神の力、命を映す為のそれに己の力を与え、少女は少女の理でもって彼らの世界へ渡る生命を創り出す。
そうして産まれた瓜二つのフィギュアへ、ありったけの魂を込めて。


「さあ、行ってらっしゃい」



少女は、扉を開いた。










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