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  10


大砲に吹き飛ばされ、目を覚ませば雲の上で天使が覗き込んでいた。この状況でマリオがその場を天国だと誤解したのは、致し方ない事だろう。
驚きのあまり飛び上がった拍子に雲より落ちかけたのも、まあ、ご愛嬌だ。

とは言えマリオは長らくスマッシュブラザーズに籍を置く、歴戦の勇士である。ピットから状況を説明されれば、動き出すのは早かった。


「とにかく追いかけるしかないな。カービィがもしかしたら追っているかも知れないし、屋敷に連絡が行っていればフォックスたちも空から追えるはずだ」


手間を取らせて悪い、と頭を下げたマリオにピットは慌てて首を振り、やる気を漲らせるように翼を羽撃かせる。

ピットの羽根に最早飛び続ける力は無い。そもそもマリオと合流した以上彼のスピードに合わせなければならないし、その上戦艦との距離は離れてしまった。
一層不利になった状況下で、しかしピットは落ち込むどころか強い希望を抱いていた。
スマッシュブラザーズ。異世界より招かれた屈指の戦士たち。その中でもひと際強い憧れを抱いていたその人が、共にいる。それだけで何でも出来る気がしたのだ。


「行きましょう!」
「ああ!」


頬さえ紅潮させんばかりに、ピットはマリオを急かし飛び出した。



だがしかし、現実はそんなに甘くはない。

数十メートルも進んだだろうか。二人は立ち往生せざるを得なくなった。踏みしめられる密度の雲がそこで途切れていたのだ。
ピットが抱えて飛ぼうにも、戦艦は雲海を抜け、更に遠くへと進んでいる。ピットひとりでも戦艦まで辿り着けるかどうか…

不甲斐なさに歯噛みするピットに、マリオは気にするなと肩を叩いた。そのマリオも、アイテムさえ持っていれば空を飛べる故に視線は険しい。
何か無いかと周囲を見渡し、背後を向いたところでふと空の彼方に影を見付け、にやりと笑んだ。


「大丈夫だ。間に合ったらしい」


え、とピットが後ろを向いたその時。轟音を立て、二人の頭上を大きな影が通り過ぎる。白と青の躯体は、スターフォックスのアーウィンだ。


「戦艦はあいつらに任せて、俺たちは下に降りて奴らを探そう!まだ爆弾を持ってるかも知れない!」
「はい!」


岩山を伝って地上へと降りてゆくマリオの後を追って、ピットもまた降下を始めた。





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