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  夏だ!休みだ!


(引きこもろう!)



「あちー…」
「うるせえ、俺だってあちーよ…」


狭いアパートの一室、むわりと熱気の籠る部屋にいい年した男がふたり。何とも暑苦しい構図である。
うへぇ、とソファにだれた俺に、テーブルに突っ伏していたKKが、顔だけを僅かに上げじとりとした視線を寄越してきた。


「つーかお前何でウチに来るんだよ余所行けよ」
「引きこもりにクーラー期待して来たに決まってんだろ。何でつけてねぇんだよ…」
「つける訳ねーだろ。昼間の電気代どんだけ高いと思ってんだ」


呆れたようにそう言って、KKは再び額をテーブルに預ける。いつもなら延々と文句を言う声は、すぐに意味のないうめきに変わった。暑くて限界らしい。
暑いのに弱いくせに、何でクーラーつけないんだよ、ほんと。

もはや年代物と言うべき古びた扇風機が、がたがた音を立てながら送ってくる風は生温い。お互い無言になった部屋に、響いたのは俺のケータイのけたたましい着信音。
手繰り寄せたケータイのディスプレイには、マコトの名前があった。


「何だよもー…」
『ごめんごめん。六さんの家でかき氷大会を子供たちがやってるんだけど、先生も呼んだら?って言われてさ』
「かき氷大会ぃ?」


面倒だ、と分かるように声を大きくしたら、机でくたばってたKKがぴくりと反応した。
マコトにちょっと待てと言ってから、俺は辛うじて目を向けたKKに声を掛ける。


「何、かき氷食べに行くのか」
「行くのはめんどい」
「だよな。俺もめんどい。マコトー、かき氷二丁。KKの部屋いるから」


溶けるよ!と叫ぶマコトの声を無視して通話を切った。
そして十数分後、俺たちは首尾よく少し溶けかけたかき氷を手に入れたのだった。





(遊びに行こう!)



海に行きたい!と最初に言い出したのはトゥーンで、海より山がいい!と反論したのはソニックだった。
それからネスが遊園地がいいと手を上げて、それにリュカが巻き込まれ。ポポとナナに至っては雪のある所がいいと騒いだ結果。



「それで、結局何処へ行くことになったんだ?」
「全部!」


酷く簡素な旅支度を整えたアイクがトゥーンに尋ねると、彼は満面の笑みでそう答えた。


「まず海に行って、泳いでバーベキュー!それから山でキャンプ!で、遊園地に行って、帰りに北極に寄るっ!」
「そうか。楽しそうだな」
「うんっ!」


指折り数えるトゥーンをアイクは微笑ましげに見ているが、今や子供たちを微笑ましい目で見れるのは彼と、あとはピーチ姫くらいだろう。ゼルダですら溜息を吐くに違いない。

大人たちは皆、行く前から疲れていた。だってもう、日程を聞いただけで大変なのは目に見えてる。
見かねたメタナイトがハルバードを出してくれることになったけど、それだって移動が楽になるだけで、はしゃぐ彼らの面倒という最大の苦労は軽減されないのだから。


とはいえ、楽しそうに支度する子供たちに、今更やめろなどとも言える訳が無く。

渋るおっさんたちを艦に押し込めると、俺はトワやマルスと苦笑を交わす。さあ保護者として腹を括ろうじゃないか。


「そろそろ出るから荷物詰み込めー!」
「「「はあーい!」」」


楽しそうに荷物を抱えた子供たちを積み込んで、ハルバードがふわりと浮きあがる。
六泊七日、俺たちの長くて楽しい旅行が始まった。





 

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