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  母組とFE組


そもそもの始まりは、キノコ王国で何とかってパーティが開かれるって話だった。

主賓?主催?のピーチ姫は当然マリオやヨッシー、クッパ、果てはドンキーたちまで招待するのだと張り切っていて、
それがお姫様たちのお茶会でヘンな盛り上がり方をしたせいで、ゼルダ姫はリンクとリンクとリンクとリンクを連れてハイラルへ。
ついでにサムスは銃器の品定めがしたいからと、専門家と言う名の荷物持ちを引き連れて買い物に。
他、借金の返済の為に出稼ぎ、とか、パルテナ様に報告、とか、それぞれがそれぞれに外出を申請した結果。


「ここまで来たらもうみんな休みでいいよね!


と、言うが早いかマスターハンドが何もかも放り出して逃走した為今日全面的に休日になった。
クレイジーもマスターを追いかけて飛び出してっちゃったし。



折角だからリュカを連れてオネットに帰ろうかなって思ったんだけど、リュカはポケトレ君のお手伝いをするんだって。
ポケトレ君は何をするのって、ポケモンたちの大ブラッシング大会だって。ブリーダーさん主催だからポケトレ君に拒否権は無い。ミュウツーは逃走したけど。
面白そうだし僕も手伝う、と申し出た時のポケトレ君はもう泣きそうなくらい嬉しがってた。
僕たちに割り振られた仕事はポケモンたちを洗うこと。ポケトレ君は健康診断をするらしい、というかそっちがメインなんだよね。

まずは石鹸を使っちゃいけないポケモンたちをゼニガメの指示のもとがしがし洗う。トサキントとか擦ってもいいものか、と思うけど、本人が気持ちよさそうなのでまあいいか。
ポケモンたちは楽しそうにしながらばしゃばしゃ水をかけてきたり、みずでっぽうをしてきたり、ハイドロポンプで押し流したりしてくる訳で、一通り洗い終わったときには僕もリュカもびしょ濡れだった。

そろそろお昼近かったから、ポケモンたちの食事を作りに行くポケトレ君と一緒に屋敷へ戻る。
屋敷に残ってるのは僕たち以外では剣の稽古をしている王子たちだけだ。王子とロイが故郷の映されていないアイクをどっちの国へ案内するかで揉めて、アイクに面倒だって言われて三人とも残った。
あ、面倒なのは王子たち本人じゃなくって、エライヒトに会わなきゃいけないことね。王子はもちろん、ロイだってあれで貴族の息子だし。
ってか二人は帰らなくていいの?立場とかあるんでしょ?

お家の事情はとりあえず置いといて、残ってる人の中で一番年上なのは王子。だから今日のお昼は王子たちが作るって言ってた。何を作るのか、正直興味津々だったからちょっと台所を覗いてみたんだ。
それが。



「何でこんなことになってるの」



台所はもうヒサンだった。
ぶすぶすと煙を上げるフライパン、飛び散るパン粉やタマネギのカケラ、ぐちゃりと潰れたタマゴ、散乱する包丁やまな板。
それらの残骸を前にいつになく落ち込んで俯くマルスと、苦笑するロイの左手からはぼたぼたと血が。慌ててリュカがライフアップをかけた。


「ハンバーグを作ろうとしたんだけど…」


困ったようにそう、ロイは頬を掻いた。うん、それは何となく分かるけど。


「よく考えたら、僕もマルスも、料理なんてしたことなくて」
「そりゃそうだよね、二人ともお坊ちゃまなんだから」


王族とか貴族とかが、子供に家事を手伝わせるとは思えない。二人とも不器用な訳じゃないとはいえ初心者だけじゃ上手くいかなかったんだろう。
多分、僕がママを手伝って作ったことあるって言ったから選んだんだろうけど、ハンバーグは意外と面倒くさいしコツがいることもいろいろあるし。
で、割と完璧主義なマルスはあまりの料理の出来なさに落ち込んでいる訳だ。

タマネギを炒めていたんだろう黒焦げのフライパンをシンクに沈めて、そこで僕はようやく一人足りないことに気付く。


「アイクは?」
「野菜の皮むいてるよ。ちょっと狭かったから、外で」


二人より料理なんて出来なさそうなアイクに皮むきを任せたのは正しい判断だと思うけど、二人でこの惨状じゃアイクはどうなっていることやら。
同じことを思ったのか、リュカが裏口へ小走りで駆けていく。すぐに引っ張られてきたアイクは台所をみて首を傾げた。


「…何があったんだ?」



抱えたボウルの中には、多少いびつだけどキレイに皮がむかれた野菜があった。





「アイクが料理できるなんて意外ー」
「うちは貧乏傭兵団だからな。子供でも、働かざる者食うべからず、だ。」


適当な大きさに切った野菜を大鍋に放り込みながら、アイクが答える。
王子たちにこれ以上料理をさせるのは危険だと思ったので、僕とリュカがハンバーグ作りを引き継いだ。王子たちはポケトレ君を手伝ってもらってる。木の実の殻むきなら怪我はしないだろうし…多分。
リュカがみじん切りにしたタマネギを炒めるため僕はアイクと並んだ。リュカはお父さんと二人暮らしで家事を任されたから料理得意なんだけど、アイクも負けず劣らず手馴れてて、作業は大変スムーズに進む。


「子供の仕事は大体は家事の手伝いだからな」
「あー…そうだね。僕も料理とか掃除とか手伝うもん」
「それに、野営を組むときに煮炊きが出来ないんじゃ、食いっぱぐれるしな」


あめ色になったタマネギをPKフリーズで冷やしてリュカがタネをこねていく。鍋に水を注いだアイクも手伝ってくれて、人数分のハンバーグを丸めフライパンへ。
出来上がったポケモンの食事を持って行ったポケトレ君たちがブリーダーさんを連れて戻ってきたときには盛り付けも完璧で。


「あら、美味しそうじゃない!」


ブリーダーさんが目を輝かせて歓声を上げたから、僕とリュカはこっそりアイクとハイタッチのだった。



余談だけど、アイクが作ってくれた塩漬け肉と野菜のスープはちゃちゃっと適当に作ったように見えたのにすごく美味しくて、笑えるけどハンバーグによく合った。
せっかく料理が出来ることが分かったから、今度また作ってもらおうと密かに思っている。








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団長が作ったのはポトフとかに近いスープ。ほぼ切って炒めて煮るだけ、でも美味しい、みたいな。
傭兵は最低限は料理できないと駄目だろうな。王子と嫡男は行軍中でも料理はさせてもらえない気がする。
裏設定で名前まで決めたのにヨウコさんの呼び名はポケトレ君に合わせてブリーダーさんになりました。


 

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