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  ロイと剣士組


金色の剣戟が袈裟掛けに薙いだ。

受け止める白銀は重量のある一撃を受けて、瞬間、しなやかな動きで受け流す。金を打ち下ろした紺青が微かに揺れたのを見逃さず、すかさず追撃に振るわれる銀。
神速の一撃を、それでも身を捻り躱した蒼は踏み込んだ勢いそのままに左足を振り上げた。まともに吹き飛ばされた空色へ、再び攻撃へと転じた黄金が奔る。


刹那、動きの変わる、太刀筋。


相対する青の王子には及ばないまでも、普段の豪快な剣技とは性を異にする素早い剣。けれどその一撃一撃を繰り出すのは紛れもない剛腕で、迂闊に受ければ押し負けるだろう。

流れるような金の残像を目で追って、思わずため息。
彼の剣は女神の祝福を受けたという大剣だ。僕ならばおそらく両手でも苦労するだろうそれを、彼は悠々と片手で振るう。その腕から繰り出される一振り一振りは僕の全力のスイングと同等か、あるいはそれ以上の威力を持っている。
威力に重きを置いた剣技は彼の最大の持ち味、だけど悪く言えば些かばかり大振りだ。型に嵌らない彼の剣を切り崩すほぼ唯一の切片でもある。
もっとも、それを差し引いても有数の威力を誇る彼の一撃は、剣どころか魔法や重火器の飛び交う乱闘においてでも猛威を振るうけど。

その定評を、今彼が振るう剣から誰が導き出せるだろう。
本人の名誉の為に誓って言うけど、乱闘の時に手を抜いてる訳ではない。アイクはいつでも、誰が相手でも全力で挑む人だから。ただ、どうしたって混戦になる乱闘で、それぞれタイプの違う一騎当千の相手に合わせて剣の質を変え続けるのはもはや無謀だ。
だから、今みたいな俊敏な剣を披露するのは一対一、それも剣士同士での闘いのときくらい。


それだって、引き出せればの話で。



「羨ましい」
「どっちが?」


剥れた声は独り言で終わる筈だったのに、隣に座るリンクにはばっちり聞こえてしまったらしい。…やっぱり耳が長い分よく聞こえるのだろうか。
数歩前で二人の打ち合いに盛り上がるピットやトワには気づかれないよう、小さな声で答える。


「…どっちも、かな」



豪快にも流麗にも剣を振るえるアイクも、それを引き出せるマルスも。
僕にとってはあまりにも遠くて、その背を見ることしかできないから。



「追いつきたいね」
「馬鹿だなぁ、討ち取るくらいでいかなきゃ」



手入れをしていた弓をしまって、リンクはに、と笑った。
それに僕が返せるのは、今は苦笑しかないんだけど。


「そうだね。いつかは」
「ロイはもっと自信持ってもいいと思うけど」



片方の剣を弾き飛ばす鮮烈な音が、空に響いた。










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ぶっちぎり強いアイクとマルス、に憧れるロイ。
拙宅の団長はソンケル先生の教えもばっちり吸収したようです。


 

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