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  スネークとアイクと


じりじりと暑い日差しを投げかけていた太陽も沈みゆく、薄暮頃。

昼間は勿論酷暑であるのだが、屋敷の周りは緑が多く、何よりアスファルトなどとは無縁なおかげで暮れ方ともなれば大分涼しい。
このところ暑さに参っていた面々に、庭で夕涼みをしよう、と提案したのはトレーナーの少年だったろうか。案は快く可決され、本日の夕食はバーベキューである。



屋敷前の広い芝生に設置されたいくつものバーベキューコンロは、過酷な争奪戦層の果て、今や惨憺たる様相で佇んでいる。

激しい戦いながらも各自それなりに満足いくまで夕食を摂り、一部は制裁を受け、また一部は部屋へと引き上げ、残るは晩酌を交わす呑兵衛と、子供たち。
子供たちはどうやら買い出しの際に花火を仕入れて来たらしい。青年組が残っているのは、その面倒の為だろう。

薄明るさはまだ残っているが、チビどもはどうにも待ちきれないようで、リンクがPKファイア等で直接火を点けないことを約束させると、散らばって思い思いに花火を始めた。


きゃらきゃらと転がる子供たちの声と、爆ぜる色とりどりの火花。それをじっと見つめる、一番大きな藍色の子供。


「お前はしなくていいのか?」


かけられた声に一瞬視線を寄越したけれど、藍色の頭はすぐ花火へと向き直る。いい、と答える声は何時もと変わりないが、態度にそぐわないにも程があるだろう。
好奇心旺盛なこいつが花火に興味を持っているのは明らかで、けれども行動に移さないのはらしくない。

それ以上言葉は掛けなかったが、座りが悪かったのだろう。目は花火に向けたまま、今度はアイクから、決まりの悪そうな声が上がった。


「…珍しいから、見ていただけだ」
「珍しい?…ああ、お前の世界には無いのか」
「有るかも知れんが、俺は見たことが無い」


こいつの世界は、話を聞くに、俺の世界で言う所の中世後期あたりであろうと思われる。技術レベルも恐らくは。まあ、その分魔法なんてもんがある訳だが…どうやらそれで花火は作れないようだ。
そう言えば、以前俺の銃にも随分興味を示していたから、火薬そのものが珍しいのかも知れない。乱闘で使うから慣れたろうが、こういった花火とはまた違うしな。

ならば尚のこと、出来なかった経験はさせてやりたい。



…と、俺が妙な親心を出すまでも無く。



「ねえ!線香花火対決するから、アイクも来てよ!」


するりと自然に手を取ったのは、ネス。沢山あるから大丈夫だと、更にマルスが背を押す。異なる意味で心を読むに長ける二人は、見事な手腕でアイクを引っ立てて行く。
いくらか困惑した目で振り返ったアイクも、ひらひらと手を払って送り出せば、それ以上の抵抗はしなかった。

少し濃くなった夕闇に、花火で浮き上がる子供たちの姿。アイクも素直に花火に興じている様だ。線香花火は早々に落としたらしく、挟んで並ぶネスとリュカの花火をじっと見つめる視線は、常より幾らか柔らかい。
落とした奴から新しい花火に火を点けるもんだから情緒もへったくれも無いが、まあ。楽しそうなら何よりか。



「たまには、こういう肴も悪くないわね」


子供たちを眺めながらグラスを傾けるサムスに頷き、俺もまた空のグラスへ冷酒を注ぐ。
わっ、とひと際大きな歓声が、子供たちから上がった。




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二周年リク、匿名さんより頂きました『アイク中心ほのぼの』です。
アイク中心と言いつつスネークさんが無駄に出張ってるのは仕様です。保護者(仮)だから仕方なかった。
リクありがとうございました!


 

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