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いいですか、ミスター。
エイプリルフールには守らなければならないふたつのルールがあります。

まずひとつ、徒に相手を傷つけるような嘘は吐いてはいけません。
それからもうひとつ。嘘を吐いていいのは午前中だけで、午後の言葉は本当でなくてはなりません。


色味の無い草臥れた部屋で、安売りのインスタントコーヒーが入った野暮ったいマグカップを傾けながら、そいつは優雅にそう謳い上げた。
時刻は午後一時前。食後になんとなしに告げた言葉が、訳のわからない理論によってとんでもない地雷になっていく。

酷く似合いでそぐわない、慈愛の籠ったゆるやかな笑みを浮かべている筈なのに、鬼の首を取った様に見えるのは、決して気のせいでは、ない。

表情の読めない分厚い前髪の下で、形の良い唇が謳う。



「ですから、今貴方が言った『一緒に住もうか』は現実にする他ありませんね?」
「…大抵の日本人はんなこと考えてねえよ」
「いえいえ、このふたつは厳粛に守らなければ。英国紳士としてはね」



私がここに越して来るのでいいですか、なんて幸せそうな息を吐く、こいつを誰か四月馬鹿にしちまってくれ!





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エイプリルフールに乗り遅れたので!
英国紳士としてはね、ってテンさんに一度言わせたかったので満足。


 

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