カウントテンとKK
堅苦しい晩餐会。レコーダー宛ら、判で押した祝い言葉を吐く親類その他に張り付けた笑顔を返し、やっとのことで寝室へと引き上げたのは夜も更けた頃。
行儀悪くブーツを脱ぎ散らかして、ジャケットも脱がないままベッドへ倒れ込む。
全く、誕生祝いと言うのなら、今日ぐらい家に縛り付けなくてもいいものを。
呼び寄せられた楽団には悪いけれども、掻き鳴らす爆音が聞きたかった。仲の良い友人と、小さなライブハウスでも借りて。
そうしたら、ミスターにだって会えたのに。
『そりゃあ残念だったなあ』
電波の向こうで、ミスターが笑う。
少し迷惑な時間だとは思ったけれど、どうしても、声だけでも聞きたくてかけた電話は、驚くほどすんなりと取られた。
いっそ機嫌がいいのか、くつくつと喉を鳴らすのさえ止めやしない。ひどい。こちらは寂しく誕生日を終えようとしているのに。
私の不満を感じ取ってか、悪い悪いと笑い交じりの謝罪が上がる。
『何か欲しいもの、ないの』
オジサンが奮発してやろう、なんて、どこまでも茶化すミスターには残念ながら敵わない。
それでも些細な意趣返しに、そうですねえ、なんて勿体付けて。
「それでは、貴方の時間を明日一日、私に下さいませんか」
『…休みだから、いいけど。欲が無いねえ』
けらけら笑うミスターに、私は内心ほくそ笑む。
言いましたね?覚悟して下さい。
朝一で予約して、人気のエッグベネディクトをブランチに、ディナーは一流ホテルで。
ドレスコードに相応しい服も、もちろんこちらで用意して。
教えてもらえず祝えず仕舞いの貴方の誕生日の分まで、至れり尽くせりしてやりますから。
それから、歌も忘れずに。
明日の朝だまし討ちで要求しますから、ちゃんと応えて下さいね?ミスター。
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Mr.KK & カウントテン ハッピーバースデー2015おめでとう!
真ん中誕生日に間に合わなかったけどテンさんの誕生日には間に合ったぜ!
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