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  KKとMZD


きゅ、と鳴るモップからライトイエロー。今日の床は青い色彩で靴音を立ててくれるから気分が良い。
ヘッドホンから流れるいつもの灰色に合わせて足とモップを運べば、視界は色で塗り込められていく。


音に色が付いて見えるのは当たり前だった。それがその他大勢にとって普通でないと気付くのも早かった。

共感覚。シナスタジア。

医学書と心理学書を読み漁った末辿りついた結論がそれで。
自他共に認める精神を病んでもおかしくない環境の中、害は無いと知り当時はほっとしたものだ。

安心が治療の術もない疎ましさへ変わるのに、然程時間は掛からなかったが。


雑多な音の洪水を厭って別の音で耳を塞いだ。塞いだ音すら気持ち悪くて段々と灰色へ傾けていった。
やはり何かしら病んでいたのだろう。仕事が仕事だ、仕方ない。

思春期を通り過ぎて、何とか折り合いをつけた頃には灰色に身を置く癖はもう抜けなかった。雑多な色は目眩すらする。

それでいて色を捨てきることも出来ず。
代わりだとばかりに、自ら音を奏でる。



モップを打ちつけたバケツがカァンッと高い音を立てた。爽快なオレンジを撒き散らして、今日の仕事は終了。ヘッドホンを帽子の上へ押し上げる。
終了の報告を入れようとして、ふと視線に気付いた。

廊下の先に立っている、サングラスを掛けた少年。
ここまで近づかれて気付かなかったのかと内心舌打ちしながら、もちろんそんなことは欠片も出さず少年へ向き直り。
へらりとした、取り繕うための笑みを向ける。


「ここは関係者以外立ち入り禁止だぜ、坊主」
「今の音、いいじゃん」


噛み合わない会話に僅かばかり苛立ちを向ければ、そのガキはにやりと笑って。



「特に最後のオレンジが最ッ高にクール!
 なあ、」


予想だにしない言葉に呆気にとられたその一瞬でそいつは目の前に。
脳髄に叩き込まれた反射でもって懐へ伸ばしかけた俺の手を、掴んだ。


「っ、」
「あんたさ、俺のパーティに参加しろよ」


返事は次会うまでによろしく、なんて言葉とともに今度は姿そのものが掻き消えて。
残されたのはいつの間にか握らされた白い封筒だけ。


「何、だったんだ…今の…」



ぴかぴかに磨かれた床には、足跡すら残っちゃ居なかった。










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掃除屋と神様の出会い。
後日問答無用で拉致られます。

 

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