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  KKと神様


『光在れ』

それは神の言葉だったのかそれとも誰かが神に乞うたのか。俺の知るところではないし、こいつも明言はしなかった。
ただ、初めに言葉があった。言葉は神であった。何処ぞの誰かが説いたご高説は正しく真理だと。


「光も闇も何も、そもそも区別がなかった。色も形も何にもないよ。ホントはね。俺が創っただけ」


唄うようにそう言って、神様は俺に歌えと強請った。
狭いアパートに不釣り合いなでっかいキーボードを無理矢理持ち込んで、俺の歌を奏でろと。



「何で俺な訳」


こいつには音楽を仕事や生きがいにしてる知り合いが山のように居る。俺よりずっと上手くピアノを弾ける奴なんて掃いて捨てる程、だ。
何だかんだで次元の高いこいつの相談相手にゃなれないし、光がどうのと言うのなら、キラキラ青春してる学生どものところにでも行けばいい。こんな草臥れたおっさんじゃなく。

などと文句を思いつつ、俺はキーに指を掛ける。

適当に叩きつければ音が勝手に鳴るのはキーボードのいいところだ。普段なら近所迷惑だろうが、どうせこいつの事、勝手に防音もしてくれてるだろう。
特に指定も無いからリズムも音程も気にせず音を繋げた。とはいえ、どうも落ち込んでいるらしい神様の手前、一応あまり色がごちゃごちゃしないようには気を付ける。
最初の藍、それから、薄く伸ばしたオレンジ。


「けーちゃんの歌だから聞きたいんだよ」


ふわりと浮かんだ神様は俺の傍を離れず、けれど触れない距離で、歌の続きを促す。俺は目を眇めて、テンポを少し上げた。神様は楽しそうに笑う。


「世界なんて何にも無いんだ。俺が何にもしなかったら。みーんな無くなっちゃった、灰色」



けーちゃんは、それが欲しいんでしょう。


囁かれた言葉は間違っちゃいなかったが、総毛立つ程気味が悪くもあり。
少し力んだ薬指が濃い緑を弾く。鍵盤に目を落として、何でもないように色を増やした。飛び抜けて明るいライムライト。

神様がまた笑う。


「でもね。けーちゃんの色が灰色だったことなんて、一度も無いんだよ。知ってた?」
「信じらんねえな」
「灰色を聞いてるのにカラフルで、だからけーちゃんの歌が好き」


歌ってよ、とせがむ神様に、俺は溜息ひとつを零してから曲に歌を乗せた。何色が乗るか知らないが、本人がご満悦なようだし、仕方ないからもうしばらく歌ってやろう。



まったく。
せめて次は、硝煙の纏わりついてないときに来て欲しいもんだ。




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クリエイターが素敵すぎて。ムラクモと対にしたかったので、ミスター視点。
前回がマクロだったのでミクロ重視。神様の癒しKKをさりげなく元気づける神様的なループが理想。


 

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