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  テンとKK


ミスターは私が家に来るのが苦手らしい。
家に人を呼ぶのを嫌うか、と言えば、神様や六さんは訪ねてくるし招くこともあると言うのでそうではないのだろう。
いっそ私のことが苦手なのかとさえ思うが、食事に誘って断られたことはないし、杞憂だと思いたい。

自惚れだろうか。


「ミルクと砂糖は?」
「あ、いえ、大丈夫です」


ふたつのマグカップを持ってミスターがキッチンから戻ってくる。私にカップを渡して、彼は向かいの床に座った。ソファは二人掛けだけれど、隣には座らない。
やはり嫌われているだろうか。けれど、コーヒーを啜るミスターは酷く柔らかに見える。さっきまでの困った様子さえ解けてしまったかのように。


「悪いな、インスタントしか無くって」
「美味しいですよ。それに、急に来てしまったのはこちらですし」
「そりゃよかった」


でも、と言葉を続けたミスターは、カップに視線を沈めて。


「あんまり来ない方がいい場所ではあるかな。治安も悪いし」


そう言って再びコーヒーを啜るミスターは、今度はとても悲しげだ。此処で漸く、私は彼が人を呼ぶのを厭っていた理由を悟る。

彼は優しい人だ。口では文句を言っていても、その相手を見捨てたりはしない、そういう人だ。
治安が悪いと彼は言った。本当はもっと、何か危ないものがあるかも知れないけれど、とにかく気にしているのはそちらだ。

ミスターはきっと、私が傷つくことを懸念している。



「知っていますか?ミスター」


その『何か』が何なのか、私は知らない。神様は、ミスターは危ない仕事をしているとだけ教えてくれたけれど、それの指し示すところが私には分からない。
けれど神様や六さんが訪ねてくるのを厭わないのは、彼らが危なくないからならば。


「私たち幽幻に生きるものは、貴方がたよりずっと、死ににくく出来ているものなんですよ」


確かに私には吸血鬼のような魔力も、狼男のような力もない。ミスターからすれば普通の人にも等しく見えるかも知れない。
それでもミスターのような只人よりはずっとずっと強靭で、怪我もしにくければ治りも早い。例え危ない目に合っても、きっと大丈夫。だから。


「…また、遊びに来てもいいですか?」


そう言えば、ミスターは目を真ん丸にして。それから、ぐしゃりと髪をかき混ぜて。


「………危ないって、言ったからな」


それだけ言って、残っていたコーヒーを一気に飲み干してから机へと倒れる。これは事実上のお許しだと取っていいだろう。私はにやけるのを止められない。
少し冷めたコーヒーを頂いて、ミスターの整理が着いたら、ソファを奨めてみよう。折角だから、彼の近くで話がしたいのだ。




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意外と顔に出てるKさんと結構敏くて押せ押せなテン様。Kさんは押しに弱そうだ。
テン様は強くは無いけど、あっさりやられるほど弱くもないと思う。剣士?騎士?だし。


 

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