カーテンの隙間から漏れる朝陽で目が覚め、美味しそうな匂いがしてきて脳も起きる。
「……起きてるの、か」
隣で寝ているはずの陽介に触れようと手を伸ばしたけど、空振りして落ちる。
今日は何も予定が入っていない日だからもう少し寝ていようかとも考えたが、陽介も起きていることだし、このまま寝ているのも勿体無い。
「おぉ……」
特に着替えもせず、そのままキッチンがある方へ向かう。
まず視界に入ってきたのは、テーブルに並べられた朝食。
スクランブルエッグが乗っているトーストパンに、鮮やかなサラダ、こんがりと焼かれたベーコン。
陽介が作ってくれている中で、最近特にハマっているメニューらしい。
綺麗に置かれた2人分の朝食を眺めながら、キッチンに足を進めた。
「よーすけ」
しっかりエプロンを身に付けて、楽しそうに作っている陽介の後ろ姿が映る。
火を使って集中しているからか、俺の声が届いていないようだ。
調子に乗って驚かせようと思ったけど絶対に怒られるから止めておく。
もう一度、さっきより少し大きめの声を出して呼ぶと、やっと気付いてくれた。
「はよー、悠。ちっとスープ作り忘れたから、待っててくれよな」
仕上げに入ろうとしているのか、こっちを向かず片手だけ上げて答えてくれる。
美味しそうな匂いに誘われ、気付いたら勝手に足が動いていた。
「っ、ちょ、あぶねーって」
後ろから優しく抱きしめて、まだワックスを付けていない髪に顔を近付けてみる。
この、朝の雰囲気がすごく好きで、落ち着く。
陽介も一度ため息をするだけで、大人しくしてくれた。
愛しいさがグンと込み上げてくる。
「……出来上がりっと。ほら、離せよ」
「やだ」
「子どもか。腹減ったから早く食べたいんだけど」
「その前に。ん」
「……うあー……、もう……!」
俺が顔を近付けようとしたら、陽介がいきなり振り向いて、そのまま唇に柔らかい感触を受ける。
それはすぐに離れ、してきた本人は思いっきり赤面していた。
「ち、違ったの、かよ……! ちゃんと、してやったからな!」
おはようのキス。
いつもは俺からしていたのに、今日は珍しくも陽介の方から。
滅多にないこの時間に、俺はますます陽介のことを離せなくなる。
「嬉しい。陽介からの可愛いキス。おはよう」
「もう言わなくていいっつの。というかお前、髪すげーことになってて笑える」
自分では分からなかったけど、きっと寝癖だろう。
俺の髪を撫でながら微笑む陽介に、つられて笑みを返す。
そして、こっちからも唇にキスを落とすと、視線を逸らしてしまった。
「ほ、ほら、片付けるから。先に座ってろよ」
陽介は腕に力を入れて俺から離れようとするが、簡単に離したくなくて、つい力を入れて抱きしめてしまう。
朝で、しかもまだ何も食べていないのに、と自分でも驚くくらい力が入っていた。
「っ、だー! 朝から本気になんなって……!」
「はー……、こんなお嫁さんと一緒なんて、俺は幸せ者だ。エプロンも可愛い」
「嫁って、お前は……。エプロンなんて料理する時付けてるだろ」
「今日は、ほら、陽介から可愛いことしてもらったし、何か特別」
そう言いながら、こっそり陽介の背中に手を伸ばしてみた。
陽介のエプロン姿は、ジュネスでバイトしていた時も、こうして一緒に暮らすことになった今も見てきているが、やっぱり何か誘われる可愛さがある。
「……何が特別、だ! 盛るな!」
「痛い、痛い。ごめんなさい」
後ろの紐に手をかけた瞬間、すごい勢いで抵抗された上に頭を軽く数回殴られた。
残念、やっぱりなかなか上手いこと許してはくれないか。
「あ、ごめん。せっかく作ってもらったパンもスープも冷めちゃうな」
「そうだ! 早く食べようぜ!」

今日もまた、良い1日になりそうだ。





20140601




[ 1/1 ]


[] []

[目次へ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -