鮮やかな桃色の並びも、濃い緑の姿もなく、周りはすっかり色がなくなっていた。
気付けば、もうすぐ冬が訪れる。
窓から見える景色は、どこか寂しく映った。
天気が悪いせいか、今日は特に気分も優れない。
季節の変わり目は要注意、なんて聞くが、確かにそのとおりかもしれない。
「……悠…?」
布団からひょっこりと、眠そうな目をした陽介が顔を出した。
「起こした? ごめん」
近付いて、ちょっと寝癖がついた茶色の柔らかい髪を優しく撫でる。
それが気持ち良いのか、陽介はとろんとした目で大人しく撫でられていた。
「まだ起きる時間には早いぞ? 叔父さんと菜々子も旅行で夜まで帰ってこないし、学校休みだし、もう少しゆっくり…」
「…悠こそ……早いんじゃねーの?」
逆に言われてしまい、悠はそれ以上のことは言わなかった。
「……外? 雪でも降ってんのか?」
今朝も冷え込んでいるな、と陽介は布団に潜り直している。
悠がずっと外を見ていたのが少し気になったのだろう。
「…陽介」
外を見ることをやめ、名前を呼びながら悠も布団に潜り込む。
「春まで…もうすぐだな…」
「っ……」
陽介の身体が、ピクリと震えたのが分かった。
それでも悠は気にせず、背を向けている陽介へ言葉を投げる。
「みんなと会えて、本当に良かった。1年ってあっという間だったけど、色々な思い出をもらったよ」
「……」
「ペルソナ使いになって、色々あったけど、何より一番良かったのは陽介に会えたこと…。ありがとう」
陽介の耳には届いているはずなのに、あれから動かない。
寝てしまったのかと思い、手を伸ばそうとした瞬間。
「………、ぅ……、っ」
何かを我慢しているような声と、静かに鼻をすする音。
「陽介…?」
伸ばした手を、思わず止めて引っ込めた。
泣いている、もしかして何か傷付けたこと言ってしまったのだろうか。
悠は焦り、潜りかかっている陽介の肩を掴んで呼んだ。
「ば…、っ、やろ…! そういうこと…言うなよ、ぉ…!」
振り向いた瞳は、涙いっぱいに溜めて悠をまっすぐと見る。
最近までこんな大泣きをした顔を見たことがなく、悠は余計に困ってしまった。
「…みんなの前じゃ、春までまだ先っつって、笑った顔作るけど……、すっげー寂しい……っ」
「よう、すけ……」
「行くなとは…言わねー……、言わねーけど……っ」
伝えたい言葉がたくさんあるのに、涙で全部流れてしまう。
言葉の代わりに、陽介はぎゅっと悠の身体に抱き着いた。
涙で濡れた顔を隠すためか、何にしても朝からこんな可愛い姿を見ることになるとは思いもしていなかった。
「陽介、ありがとう…。すごく嬉しい…」
こんなにも自分のことを想ってくれている…、悠はこの上ない幸せを感じていた。
「春になっても、その先も、たくさん陽介と過ごしたい」
「…ったりめーだ…! 離すなよ…っ」
「……陽介…、可愛い…」
「な…っ、人が真剣に言ってんのに…可愛いとか言っ……、ん、っ」
愛しさを込めたキスを、柔らかい唇にぶつけた。
すぐにそれは深いものへと変わり、耳を刺激するほどの水音が静かな部屋に響く。
「ん、ん……ッ、ふ…」
苦しそうにもがく陽介の後頭部を押さえて、逃げ道を塞ぐ。
それで諦めたのか、抵抗がなくなり、積極的に舌を絡み始めた。
悠も応えるように、濃厚に深く、キスを続ける。
夢中になっているのをいいことに、悠は躊躇せず陽介の下半身へ手を伸ばした。
「っ、ん……! ちょ、っ」
するりと衣服を脱がされ、いくら布団の中といえども寒い季節、身体が別の意味で震えた。
「…あ。昨日ちゃんと処理したんだけど、ちょっと濡れが残ってる」
「ば……っばかやろ、っ言わなくていいっつーの…!」
分かりやすいくらい顔を真っ赤にさせている。
それだけでも悠を煽っていることを、本心は知りもしない。
「…陽介、いい?」
「ここまで脱がせておいて聞くのか…」
「ごめん。昨日より激しくしちゃうかも…あ、でも存分に声出して良いからな」
「…え…、今何て言……」
「何て言ったかって?」



この先もずっと、愛し合おう。




終。





2012.10.24




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