いいんだ、コレでなんて言わないで。







ホスピス。
此処は、死んでいく末期のガン患者の人を看取るところ。
痛みを和らげ、余生を好きなように過ごさせてあげる。
そんなところ。
俺が此処の看護師になったのは、普通の病院で働く医者なんかより、気持ち的に楽だから。
普通の病院と違って、此処の目的はあくまで看取る事。
病気を治す事じゃない。
死ぬのがわかってる患者が相手だから、責任が自分にのしかかることもないし。
情を移さなければ、辛い事なんてない。
そう、思ってたのに。


「おはよー」
「good morningセンセ。相変わらずやる気無さそーだな」
「はいはい、相変わらずだねその口も」

俺の皮肉も、彼はどこ吹く風というような感じで見事に受け流した。

「痛いとことかは?」
「ない」
「そ」
「ああ」

末期ガンの患者が来るこの病棟に、若い患者が来る事は比較的少ない。
しかも、此処まで若い患者はホントに稀だ。


伊達政宗 17歳


まだ高校生の彼をガンが襲ったのは、本当に不幸なことだと思う。
だけどそれより驚いたのが、家族が彼を此処に入れたこと。
(普通なら・・・治療をちゃんとするか、家に帰してあげるだろうに・・・)
余命を宣告された彼を、家族は此処に入れた。
しかもその後、一度も会いにも来ない。
どうなってんだ、此処の家族は。
息子がどうなってもいいのか。

何処となく寂しそうな、哀愁漂う政宗の横顔を見ながら、俺は溜息を吐いた。




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