ぴかっ

 ごろごろ

  ごごごごご


大変だ!へそがなくなる!




明るいんだけど薄暗い部屋で、時々光るのは、自然界の催す有害電気。何がどうして有害かって、タイミングよくこの部屋にはアイツが居ないコト。いつもなら、「バカじゃねーの」って、毛布で暑い上からさらにおぶさってくるわけだけど。あの腕はどうしたって、暑さになんか負けないくらい、落ち着くんだ。

ぴかっ

ああ、また来た!って思ったら、何!何なの!今度は人工電飾が白旗を上げました。パシンって回路の断たれた音が、悪魔の嘲笑いに聞こえてなりません、隊長。あ、あれね。隊長はうちのケロイド部長ね。地震より火事より何考えてるかわかんないパパよりこわいんだ、あの方。

や、でも、雷様より怖いモノなんかありませんともさ。

嗚呼、それにしても何て今日は運が悪いんだろう。アイツは居ないし、カミナリ様は怒ってるし、隊長が怖いのは元々だけど、アイツは居ないし。蛍光灯に見放された挙句、雨まで降って、アイツは居ないし。こんなコトなら、くだらない口喧嘩なんかやめとけばよかったのかも知れないね。

うん、もう聞いてよ!まったくもってくだらないことだったんだよ!
普段から女遊びってのがお上手なアイツ様々は、ほらね、やっぱり。特定の女ってのが居たって、関係ないわけで。(究極で至高のにゃんにゃんだから。某漫画っぽくね。)んでんで、私は私でね、運悪く寂しがりの泣き虫の弱虫だったわけ。(ついでに、強がりなの)そして更に、神様の気まぐれかお互い好き合っちゃった?のが駄目だったっぽくて。彼氏彼女なんて甘い言葉に付き物の、ジェラシーですがな。そしてついに昨日、ぷっちん!いっちゃったわけですよ!あはは!

そいでね、思わずっていう、ホント、思ってもみなかった台詞が自分の口からポロッと。そう、そうですよ。予想通り、別れる!サヨナラ!何て叫んだ馬鹿は私です。
勿論、アイツは逆切れフィーバー。携帯と財布、そして何故か私の携帯まで奪って、行方不明になりました。


「あー、チクショウ・・・」


何だかわかんない、怒りやら恐怖やら、もうホントわかんない。カミナリ様は未だおばかな私を戒めるかのように鳴り響いています。こわいこわい、へそどころか頭まで隠して、何やってんだろうね?
だって、気をつけないと全部、とられちゃいそうなんだよ。大事なものをさ、毛布の中に引っ張り込んでるんですよ。でも大事なものなんてさ、普段ならいくつも挙げられるのにこういう時に限って、いざ、いきなり、「無人島に持ってくなら何!?」って聞かれた勢いで、混乱してしまうものなのです。

だからとりあえず、自分の身は確保。だって自分が居なきゃ、駄目じゃん。心臓が無いと生きてられないし、目が無いとアイツのホームラン見れないし、耳が無いと声が聞けなくて、口が無いと、何よりアイツの名前が呼べないじゃない。だから取り敢えず、自分が大事。ってか、何より、今まで築いた思い出が、大事。

肝心な時に、傍に居ないのはアイツ。でも、肝心な時に、アイツを求めるのは私。

別れるなんて、冗談だから、さ。せめて携帯返せこんちくしょう。
いくら消されたって、お前の番号は覚えてるんだ!エッヘン。ってゆうか何かもう兎に角こわいんだって。
助けて隊長!カミナリ様が私の思い出奪ってく!

あったかい手とか、でっかい背中とか、ちゃんと覚えてられるかな。いや、きっと忘れらんないんだろーな。だっておっかない時、悲しい時、全部全部アイツに助けて欲しいの。忘れられないのが、その証拠になるよ。

ねぇ、あいしてるから、帰ってきてください。

アンタがカミナリ様に奪われたら、私絶対、生きていけない自信あるもん。


「・・・・・芭唐」


ああ、なんて虚無感!毛布にくぐもった自分の声が、哀れでなりません。
返答なんて、無くて当然だって知ってるから、さ。


「芭唐・・・・」


呼ぶだけは、タダ、なの。
ショーウィンドウの綺麗な服の値段に手が伸ばせなくても、見るだけはタダなのと一緒。

どんだけ、特別になりたくても どんだけ、あいして欲しくても 手が伸ばせない。
なら、呼んでるだけで、いい。


(やっぱ、強がりも災いの一部だね)


「芭唐・・・・・」


ぴかっ


「・・・ばか、ら」


ごろごろごろ

あー、カミナリ様って意地悪ね。どうして呼ぶ声すら、かき消してしまうのですか。


「・・・・・・ばか・・・」

「変なところで区切んじゃねーよ」


ふと、幻聴が聞こえた気がしまして。一瞬目を開けてしまったけど、毛布の中は真っ暗なので、電気は点いてないんですよ。ここまで来ると盲目末期症状か、とか思って、もう一回目を瞑ったら


「ただいま」


だって。
あったかいんです。暑いんです。毛布より。

驚きすぎて気が緩んだので、「暑い」って、言っちゃいました。したら「かわいくねー」って聞こえて、これはやっぱ現実なんだよね?(だって妄想なら、もっとやさしい言葉をくれるもん)


「・・・・・名前の泣き顔、初めて見た」


剥がされた毛布の外は、暗くて、ぴかっごろごろ。
だけど、目が慣れてたせいか、アイツの顔ははっきり見えました。


「・・・・・こわかったんだもん」

「俺じゃなくて雷なのかよ、理由」

「うん・・・」


そりゃ勿論、カミナリ様ですよ。


「うわ、ムカつく」

「だってカミナリ様ってば、アンタを奪ってこうとするから」


したら一瞬、いつの間にか現れた芭唐は呆気にとられたって顔をして


「俺はんな弱くねーよ」


今度は何も見えない視界に、心臓の音が耳元で安心をくれました。


「・・・・・・おかえり」

「遅っ」

「もーどこにもいっちゃやだ」

「・・・・・・」

「何て言わないけどさ」

「言わねーのかよ」

「とりあえず」



「こーゆー時は、傍に居てください」




それから、アイツの女遊びはピタリ、と、止みました。

――ってゆうか、何で私の携帯持ってったの?
――屑桐さんのアド、削除したから。

どうやらアイツの粗相の原因は、隊長にばっか頼る私にやきもちやかせたかったんだって!
お互いの無駄なプライド対戦は、 カミナリ様が上手に奪ってくれたみたいです。




拝啓、あたしの雷様

前言撤回、カミナリ様。 貴方とっても、良い性格してると思うの。




2006.xx.xx
2012.05.15 再アップ




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