「人の部屋で溶けてんじゃねぇよ」
鉄朗の部屋のベッドで暑さにやられてダレている私に向かって、部屋の主はそう言った。うつ伏せから寝返りを打って仰向けになる。チラリと鉄朗の顔を見れば、彼は哀れむような視線で私を見ていた。うわぁ、ひどいなぁ。なんて笑いながら言葉を返す。だって暑いんだもん。仕方ない、仕方ない。
今度は横向きになって寝ていると、急になんだか暑苦しくなった。なんだろうと思いながら上を見れば、そこにいたのは鉄朗。マウントポジションを取られたのだとすぐに理解できた。
「鉄朗、暑いよ」
「知ってる。俺も暑い」
「じゃあなんでこんなことしてるの」
「キャミソールにショーパンでベッドにいるお前が悪い」
「そっかぁ、私のせいかぁ」
鉄朗がそんなことを言うものだから、仕返しに軽くほっぺたを叩いてやった。ぺち、とやる気のない音が一回。
「痛ぇよ」
「ウソなの知ってる」
「だろうな」
鉄朗はちょっと意地悪く笑って、私の首筋に顔を埋める。シャワー入ってないから汗くさいよ、と言う前に彼は首筋を舐めて、そこに吸い付いた。チクリとする。ちょっと痛い。
「ねぇ、そこ、見えるとこだよね」
「あぁ」
「もう、馬鹿」
見えるところに付けられた。夏だというのに。ああ、どうしよう。暑い暑い。
141124 酸性