※高校生
ふと目が覚めた。まだ真夜中らしく、外は暗い。しかしカーテンからほのかに差し込んでくる街のネオンが、上半身を起こした光子郎をぼんやりと照らしていた。なんで起きてるんだろう。最初に思った疑問はそれだった。二人で一緒のベッドに入って、抱きしめ合ってそのまま眠って、すごく幸せだったのに。ただ光子郎が起きていたなら、私は何も疑問に思わなかっただろう。けれど、ネオンに照らされた光子郎はどこか虚ろで、少しだけ怖かった。
「こ、しろ……?」
私の口から出た、光子郎に対する問いかけは、思った以上にか細いものだった。だけどこの静かな部屋ではちゃんと彼には聞こえていたようで、光子郎は私の方に顔を向ける。
「すみません、起こしてしまいましたか」
「ん…、大丈夫だよ」
どうしたの、何を考えてたの、とは聞けなかった。代わりに光子郎の腕に手を伸ばす。華奢だけど、ちゃんとがっしりしている男性の腕。
「光子郎……、寝ようよ」
彼の腕に頬ずりをして、それから光子郎の首に手を伸ばした。そして半ば強引に彼をベッドの中へと引きずりこむ。怒られるかなぁ、と片目を開けて光子郎を見ると、彼は私の予想を超えていた。笑っていたのだ。
「全く、しょうがないですね」
そんなふうに彼は言って、私を抱きすくめた。光子郎の匂いがする。何よりも安心するその匂い。光子郎の背中に手を回して、私はまた眠りについた。
140919 酸性