「夏休みだよぅ」

突拍子もなく、目の前にいるスクアーロに呟いた。任務が終わったあと、血だまりの上でだ。彼は訝しげに私を見て、すぐに目線を離し、そうだな、と小さく返した。んー、釣れないなぁ。せっかくの夏休みなのに。世界中の子供たちなら、当にこの休みを満喫しているだろうに。

「んなこと言ったって、俺たちにそんなもんはねぇだろうが」

そう、吐き捨てるようにスクアーロが言う。そうだ、私たちに休みなんて無い。朝から夜中まで殺して殺して殺してたまに殺されてばっかり。万年人員不足のヴァリアーにとって、それは仕方のないことだった。それは私も分かっている。だけど、割り切れないものだってある。

「私、まだ十八歳なんだけど」

十八歳。日本で言えば高校三年生、受験勉強真っ只中の青春しまくりの歳だ。それがなんだってろくに休みもくれずに殺しばかりしてるのだろうか。
グチャリ、と肉片を踏む。忌々しいなぁ。腹いせにその肉片に向かって一発弾丸を打ち込んだ。既に死んでいるそいつは、うんともすんとも言わない。

「う”おぉい、無駄弾使うな。もったいねぇだろぉ」
「じゃあ夏休みを頂戴」
「それは無理だぁ。ボスさんにでも言ってみろ」
「もうとっくに言ったよ。ワインが飛んできた」
「ッハ、だろうな」

そんな他愛もない話をしていると、携帯に電話がかかってきた。どうやら死体処理班が到着したらしい。帰って報告書提出しなきゃな、なんて思いながら死体の山から重い腰を上げる。軽く飛んで、既に歩き出しているスクアーロの隣に着地した。遠くで私たちを待っている部下に手を振りながら、私はまた言うのだ。

「夏休みがほしい」
「まだ言うか」

140804 酸性



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