陸奥守は精悍な顔立ちをしていると思う。男らしくて凛々しい素敵な顔立ち。刀剣たちはみんな整った顔をしているけれど、それは『綺麗』や『美しい』といった部類のもの。だから陸奥守の顔は、私からしてみればとても目立っていた。いや、顔だけじゃない。彼の声や仕草も、刀剣たちの中では一際目立っている。豪快な笑い方や、拳銃を扱う動作。その一挙一動を無意識に目で追ってしまうくらいには。
いつからか、そんな彼に触れたいと思うようになった。近侍にしてからは尚更だった。日に日にその思いは大きくなって、心の中では処理することができなくなっていった。だから、仕方のなかったことだと思いたい。柔らかな日差しの降り注ぐ中で、楽しげに笑っていた陸奥守に向かって「触れたい」と半ば無意識に呟いてしまったこと。その瞬間、私と陸奥守の間の時間が止まった。

「あ、主…?」
「えっ?……あっ!」

陸奥守が戸惑った顔をして私を見ている。私は一瞬自分が何を言ったか理解できなかった。けれどすぐに思い出して、顔が赤くなるのが分かった。言ってしまったものはもう取り返しがつかない。気持ちの悪い人間だと思われてしまっただろうか。気まずくなってしまって、私はもう陸奥守の顔を見ることができなくなってしまった。俯いたまま口を結ぶ。

「おんしゃは、わしに触りたいがか?」
「えっ…?」

顔を上げて陸奥守を見る。彼は照れ臭そうな顔をして私を見ていた。その表情に、こちらまで更に赤くなる。
陸奥守がふいに私の左手を取った。そしてそれをそのまま彼の頬に持っていく。私の左手は、彼の頬と右手に挟まれた。

「これでええか?」
「……うん」

手が、身体が熱くなるのが分かった。この熱が陸奥守に伝わってしまわないか、それがとても心配で、でも私はどうしてもこの瞬間を手放したくなかった。

「ありがとう、陸奥守」
「おん」


150817 酸性



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -