「スク、一緒にお酒飲もうよ」

久しぶりにオフの日、同じオフで談話室でソファーに座り新聞を読んでいたスクアーロにそう言えば、彼は怪訝な顔をしてこちらを見た。スクアーロの、一つにまとめられた髪がさらりと動く。視線が自然とそちらに動いて、相変わらず綺麗な髪の毛してるなぁ、なんて思った。それから、彼が私が話しかけるまで読んでいた新聞に目を向ける。丁度開かれたページには、昨日火事になった場所について書かれていた。住所を見て、私が昨日任務で燃やしたところだ、と気付く。スクアーロは私のそんな一連の動きを見つつ、さらに怪訝そうな顔をした。

「てめぇ未成年だろぉ」
「昨日誕生日だったからもう十八歳になったよ。立派な大人」
「そうだったかぁ?」

私は昨日、十八歳の誕生日を迎えた。イタリアの成人年齢は十八歳だから、私ももう立派な大人だ。ボスやスクアーロたちから見たらまだまだ子供だしペーペーかもしれないけれど。スクアーロは興味なさげに誕生日なぁ、と呟いてからソファーから立ち上がった。

「どこ行くの?」
「部屋。どっか店行かなくても別にいいだろぉ」
「うん!」

その一言で、スクアーロが私の誕生日祝いに付き合ってくれることが分かった。談話室を出てスタスタ歩いていくスクアーロの後を追う。きっといま、私は分かりやすいくらい笑顔なんだろうと自分で思った。



「気持ち悪い…」

飲み始めて二時間が経った頃、たいして飲んでいないはずなのに私はもう気分が悪くなっていた。スクアーロの部屋のソファーで横になりながら、しれっとお酒を飲み続けているスクアーロを見やる。

「ま、最初はそんなもんだろ」
「…そういうもん?」
「そういうもんだぁ」

いま彼が飲んでいるのはウイスキーだ。アルコール度数だって高いはずなのに、スクアーロは顔色ひとつ変えやしない。羨ましいなぁと思う。
私はテーブルの上に置かれているカルーアミルクを睨んでため息を吐いた。もっと飲めると思ったのに。

「あんまり飲むと明日の任務支障出るぞぉ」
「んー」

スクアーロは手に持っていたウイスキーを飲み干すと、私が処理しかねていたカルーアミルクを手に取った。止める間もなく、それはそのままスクアーロに全て飲まれてしまう。もう今日は止めろということなのだろう。そのありがたい忠告はしっかりと聞き入れることにした。

「つーか、なんでいきなり飲もうなんて言った。理由はなんだぁ」
「…私ね、ボスとお酒が飲みたいの。小さい頃からの夢だったんだー」
「う”おぉい、随分ちんけなゆめだな、そりゃあ」
「失礼な」
「あのボスさんとサシで飲めると思うかぁ?」
「どうだろ、分かんない」

確かに人と馴れ合うことが好きではないボスとお酒を飲むなんて、しかも二人でなんてできないかもしれない。でもこれは私の幼い頃からの夢なのだ。だからいつか叶えたい。そのために、成人した今から少しずつお酒に慣れたいのだ。

「ま、ボスと飲めるようになるまでせいぜい付き合ってやるぜぇ」


2150509 酸性



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