なにか作業をするとき、私はいつも音楽を聴いている。テスト勉強をするときも、それは例外ではない。世間では、集中ができない・よくないとされているけれど、幼い頃からそんな風に育った私にとっては、音楽がない方が集中できなかった。
平日、家に帰宅するとすぐにイヤホンを付けて、いつものように勉強を始める。来週は期末テストだから、特に勉強をしなければならないのだ。
教科書とノートを開いて、ルーズリーフにシャープペンシルで数式を書いてゆく。テンポの良い曲と合間って、問題はスラスラ解けていた。しばらくして、ひと息つくかと気を抜いた瞬間、いきなり耳からイヤホンが抜けた。カナル型のイヤホンだから抜けるはずはない。またか、と半ば呆れながら後ろを向く。

「もう。いつもいきなり抜かないでって言ってるでしょ」
「悪ぃ悪ぃ。ドアノックしても気付いてもらえなかったからさ」

後ろを向くと、すぐ傍には案の定クロがいた。私のイヤホンをいきなり外す人なんて、クロ以外に存在しないからだ。クロは楽しそうに笑いながら、イヤホンをクルクル回している。全く、幼馴染だからって人の物で遊ばないでほしい。

「勉強か?」
「うん。来週テストだから」

チラリとクロが私の机に目を向ける。字が汚ないから、見られるのは少し嫌だな。ノートを閉じようと手を伸ばすと、それはクロによって遮られた。

「なに?」
「ここ、間違ってる」
「え?……あ、ほんとだ」

相変わらず数学は苦手なんだな、とクロが笑う。いよいよ気恥ずかしくなって、私は教科書もノートも閉じてルーズリーフの上に載せた。クロは私の気持ちも知らずにイヤホンを耳に当てている。

「誰だ? なんか聴いたことある曲だけど」
「この間メジャーデビューした子の曲だよ。ほら、ケータイのCMで使われてる」
「ああ、あれか」

私が聴いていた曲は、私たちと同い年の子の曲だ。澄んだアルトの声が特徴の、可愛い女の子。クロはしばらく聴いたあと、興味なさげに私にイヤホンを手渡してきた。
私は自分の耳に付けていたイヤホンを外して、音楽プレーヤーの電源を切る。そしてクロに質問した。

「それで、なんで私の部屋にいるの?」

150123 酸性



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