そこからの沈黙は重かった。青峰に会って不機嫌な若松は、むすっとしたまま私の隣を歩く。また八つ当たりで暴言を吐かれるのか、なんて思って私もウンザリした。顔を合わせれば喧嘩ばかり。こんなのどこがカップルだ。

「……なんで青峰と一緒にいたんだよ」
「なんかあっちから話しかけてきた」
「……あっそ」

若松から聞いてきたくせに彼は興味無さげだった。私の方も見ずに、ただひたすら帰路に着いている。何か言ってやろうかとも思ったけど、火に油を注ぐのはよくない。
ふと、若松の左手が目に入った。そういえば、私と若松は付き合ってから一度も手を繋いだことがない。一年も付き合っているのにだ。もしここで私が若松の手を掴んだらどうなるだろう。もしかしたら、もう喧嘩はしなくなるのだろうか。そんな色々な思いが頭を駆け巡って、私は思わず若松の手を掴んだ。

「うわっ!な、なんだよっ」
「え、いや……。手、繋ぎたいな、とか」

途端に若松の顔が赤くなった。耳まで真っ赤にしている。若松のこんな顔、初めて見た。

「若松、顔、赤いよ」
「うるせぇ」

分からないの照れた顔を見るのはいつ振りだろう。もしかしたら告白されたとき以来かもしれない。それくらいに私たちはカップルらしくなかった。
ぎゅっ。不意に若松が私の手を握り返した。私より大きくて堅い手。男の子の、手。それを意識した瞬間、自分でも顔が熱くなるのが分かった。

「言っとくけど、お前も顔赤いからな」
「……ばか」

なんだか、今日はカップルらしいかもしれない。




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