いつからこんなケンカップルになってしまったのだろう。放課後の部活中、私はふとそんなことを考えていた。昔、一年前はこんな風に喧嘩することなんて少なかったのに。付き合う以前や付き合い始めは何事もなかった。むしろバカップルだと先輩たちにからかわれていたのに。それがどうして、喧嘩ばかりするようになったのか。だけど考えても何も思い浮かばない。そして、なぜ喧嘩しているのかもも分からなかった。考えても分からないものは、考えても仕方のないことだということだろう。そう思っていると、足元にバスケットボールが転がってきた。拾って前を見れば、そこにいたのは若松。
「あ……。はい、ボール」
「お、おう」
沈黙。早くコートに戻ればいいのに、若松は私の目の前に突っ立ったままだった。早く戻れ、バカ。そんな言葉が口から出かかって、思わず口をつぐむ。危ない、きっとこういうのがいけないんだ。そう確信して若松を見ると、彼も私を黙って見ていた。
「な、なに」
「いや、別に」
「練習しないの?」
「する」
そうは言っても、若松はそのまま動かなかった。正直、意味が分からない。助けを求めようとコート内を見るけど、みんな練習ばかりでこちらなど見向きもしなかった。
「さっきからなに、若松」
「違ぇだろバカ」
「は?」
ちょっと待って。今のどこに暴言を吐く要素があったの。よく考えたらまた話通じてないし。本当に若松という人間はよく分からない。そういえば、なんで付き合ってるんだろうか。もうそんなことまで分からなくなってしまった。
「いいからさっさと戻れ。サボんなアホ若松」
我慢できなくてそんなことを口走ると、若松は顔を歪めたあと、吐き捨てるようにうるせぇと言ってコートに戻って行った。