今吉先輩聞いてくださいよあの馬鹿のこと。なんであいつはあんなに馬鹿なんですかね。それはもう本当に切実に。さっきだってあいつが馬鹿だから言い合いになったりなんかして。言ってること支離滅裂だし最終的には叫ばれたし。なんなんですかね、さっきといい試合中といい煩すぎますよね。今吉先輩もそう思いません?…笑ってないで何とか言ってくださいよー。私が言ったって結局ダメなんですから。今吉先輩がこう、ガツンと言ってくれないと。あいつがちゃんと言うこと聞くのって今吉先輩だけなんですよっ?

昼休み、今吉先輩のところでそんな愚痴を言っていると、先輩が優しく私の頭を撫でてきた。今吉先輩はあいつ、私の彼氏とは違って本当に優しい。今だって私の話を嫌な顔せず聞いてくれている。みんなは腹黒い、怖いなんて言うけれど、私にとってはそれもまた尊敬できるところの一つだ。

「だいぶ落ち着いたか?」
「……はい」
「まぁ、名字の言い分も分からんでもないけどなぁ。せやけど、仲直りしたらどや?」
「いーやーでーすー」

仲直りなんて嫌だ。だってあいつの言ってる意味なんて分からないし。あいつが謝らないということは、必然的に私が謝らないといけなくなる。私は悪くないのにそんなのは嫌だ。
はぁ、なんてため息を吐いて机に突っ伏すと、ガラガラと勢い良く教室のドアが開けられる音がした。そしてあいつの声。

「ここにいやがったのかよ、名字!」
「名前叫ばないでよ。ここ三年生の教室なんだけど」
「いいから帰んぞ」

私の目の前に来て、私を睨む彼氏の若松。相変わらず来るのが早い。会いたくなかったのに、と思って舌打ちをすれば若松は露骨に嫌そうな顔をした。私もいま恐らく嫌な顔をしているだろうから、あえてそこには突っ込まない。
そんな私に痺れを切らしたのか、若松は私の腕を思いっきり掴んだ。そして私を無理矢理椅子から立たせると、ズリズリと引っ張り出した。

「嫌だ、止めて。不潔。離してよ、バカ」
「ふざけんなブス」
「誰がブスだ」
「お前だよ」

そんなことを言いつつ、私は大人しく若松に引きずられていく。チラッと後ろを振り返ると、今吉先輩が笑いながら私たちに手を振っていた。




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