名前の足や腕には、黒く大きな痣が無数にある。青や紫を誇張したような色ではなく、本当の黒だ。彼女はそれに日々蝕まれている。その痣は日に日に大きくなり、それに比例して彼女は眠ることができなくなる。それが名前の奇病だった。
白蘭さんはそんな名前が、誰かによって傷付くことを恐れている。だからこそ、ここに幽閉しているのだ。ここにはなんでも揃っている。彼女が一度何かを欲しいと口にすれば、白蘭さんはその日の内にそれを持ってきてしまう。それ程までに、白蘭さんは名前にゾッコンだ。

「ああ、そうだ。アレは届いた?」

名前が僕の方を見て問う。僕は頷いて、持ってきた紙袋を彼女に差し出した。名前はお礼を言ってそれを受け取る。

「その小瓶、何に使うんだい?」

白蘭さんが名前の髪を梳きながら聞く。彼女は微笑んで、紙袋から透明な小瓶を取り出した。

「大切なものをたくさん詰めるの。あなたに贈ろうと思って」

名前は不思議な人間だ。いや、人間と呼んでいいのだろうか。彼女は魔法のようなものを使うことができる。炎をリングに灯し戦うこの時代においては、さほど驚きはしないが、とにかく彼女には不思議な力がある。

「それは楽しみだなぁ。早く欲しいね」
「ダメだよ。ちゃんと待ってて」

甘い雰囲気を醸し出した二人に、僕は一言断りを入れて部屋を出た。あの部屋にいるのは、息が苦しくなる。二人が甘いからではなく、なんとなくあの部屋が嫌なのだ。
はぁ、とため息を吐いて、エレベーターに乗る。当分は帰って来ないだろう白蘭さんの分の仕事をこなさなければ。
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