「正チャン、今日もあの子のところ、一緒に行くよね?」

白蘭さんは自室でマシュマロを片手で愛おしそうに弄りながら、僕にそう聞いてきた。あの子とは、白蘭さんが愛玩してやまない一人の女の子のことだ。女の子、というよりは女性と言った方がいいだろうか。齢十八であるあの子を、女の子と言ったらいいのか女性と言ったらいいのか、僕には分からない。しかし、とにかく白蘭さんが愛玩している子のことである。
彼女はミルフィオーレの最深部に幽閉されていた。奇病であるため、白蘭さんが人の目から隔離したのである。目に見えてしまう彼女の奇病は、やはり人目を引く。彼女が傷付くことを恐れた白蘭さんは、このミルフィオーレの地下の奥深くに彼女を仕舞い込んだのだ。それに加え、彼女が白蘭さんにとってあまりにも可愛すぎるため、白蘭さんが誰にも見せたくないと思ったためでもある。つまりはただの独占欲だ。僕は例外として白蘭さんに同行することが許されているし、一人で彼女に会うこともできる。しかしそれ以外の人間は、チェルベッロや六弔花ですら、彼女に会うことは叶わない。それ程までに、白蘭さんは彼女を愛玩し、溺愛していた。

僕は二つ返事をし、白蘭さんに付いてゆく。特別なエレベーターで最深部まで行き、あの子の部屋に入る。
歳に似合わないたくさんのぬいぐるみが部屋には積み上がっている。かと思えば本棚には僕が理解できないような本が並び、机の上には宝石とパソコン。不揃いでちぐはぐな、大きな大きな部屋の真ん中にあの子はいた。僕たちに気が付くと、小走りでこちらにやってきた。

「白蘭、正一。久しぶり」
「久しぶりって……。昨日も会ったじゃないか」

僕がそう言えば、彼女はハニカミながら「私にとっては久しぶりなの」と言った。白蘭さんはそんな彼女の頭を撫でながら、長い黒髪に唇を寄せる。

「可愛いね、名前」

きっと他の人だったら、甘ったるくてどうしようもないだろう。しかし僕は慣れているから問題ない。
名前はくすぐったそうに身をよじり、白蘭の腕からスルリと抜けた。彼女の着ている白いワンピースがふわりと揺れる。

「まったく、白蘭は相変わらずなんだから」

クスクスと笑いながら口元に手をあてる名前。彼女の腕には黒く大きな痣がある。僕はそれを、未だに直視することができない。
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