朝、目を覚ますとやけに頭が痛かった。隣を見れば米屋が眠っていて、そういえば昨日泊まったんだっけ、と思い出す。そこで頭が痛いのは枕が違うせいだと気がついた。
カチューシャをしていない米屋を見るのは初めてだ。彼の顔にかかっている髪を払ってやると、予想以上にさらさらしている髪に少しびっくりした。どうやらいつもはワックスも使っているらしい。
「綺麗な髪…」
結局、私は米屋と一夜を過ごしてしまった。過ごしたといっても身体を重ねてはいない。ただ彼の部屋で、お菓子を食べながら一晩中ゲームをしただけ。ひたすらゾンビを撃ち殺していくというゲームを聖夜にプレイしたのはどうかと思うが、それなりに爽快感があったから良しとしよう。
ふと時計を見ると、既に十一時だった。今日から冬休みでよかったと心の底から思う。
SNSでも見るか、とスマートフォンに手を伸ばすと、どこからかけたたましく音楽が鳴り出した。
「わっ!?」
急いで音の出処を探すと、それは米屋のスマートフォンから出ていた。どうやら着信らしい。熟睡しているところを起こすのは気が引けるけれど、仕方がない。
「米屋、米屋」
「………ん〜?」
身体を何度か揺すって声をかけると、結構アッサリ彼は起きた。知らない一面を垣間見た気がする。着信が来ていることを告げスマートフォンを彼に渡した。
「……もしもし? あー、おお。了解。すぐ行く。じゃあな」
そう言って米屋は通話を終えた。
「もしかして、ボーダー?」
「ああ。なんか人手が足りないらしい。行かなきゃならなくなった」
「そっか」
じゃあ私も帰ろうかな。そう言って起き上がろうとすると、米屋が手を伸ばして私の頭を掴んだ。そのままガシガシと頭を撫でられる。
「わっ……」
なんだか頭をマッサージされているようで気持ちがいい。そのままされるがままになっていると、ピタリと彼の手が止まった。
「名字」
「んー?」
「来年はちゃんと彼氏作れよ」
「米屋もね。ちゃんと彼女作りなよ」
そんなことを言いながら、来年もこんなクリスマスでも悪くないかな、と思った。人間というものはやっぱり人肌が恋しくなってしまうものだから。
(了)