それから私たちはファミレスでご飯を食べ、クリスマスのグッズが売ってるところを回ったりして、カラオケに行った。時計の針は二十三時を指そうとしている。高校生は条例で二十三時以降は出歩いてはいけないから、もうそろそろ帰らなくちゃならない。そう思う反面、私は米屋の手の温かさが名残惜しかった。
米屋のことをどう思っているかと問われれば、好きだと迷わず答えるだろう。しかしそれは恋愛としての意味じゃない。友達として、クラスメイトとしての好きだ。私にとって米屋は恋愛対象じゃない。けれど、クリスマスイブにデートに誘われて手を差し出されたら、ひとり身で寂しい私はそれに甘えてしまう。そんな自分を悪い人間だと思う。でも弱い人間なんてそんなものだ。
私と米屋はいま、二人でイルミネーションを見ていた。周りにそれほど人はいない。カップルなら、大抵は彼氏の家に行ってこれから甘い夜を過ごすだろうし、ひとり身ならさっさと帰っているだろう。
寒いと呟いた私に、米屋はそうだなと答えた。すると、その後すぐに手が痛いくらいに米屋に握られる。二人の手の間の隙間がなくなって、ぴったりとくっついた。

「手を繋ぐと、お互いの粒子が交わるんだって」
「へぇ。じゃあ俺らも交わってんだ」
「多分ね」

こんなことを話してみても、つまるところ虚しいだけだ。私たちはカップルではないのだから、一緒にいればいるほど寂しくなってくる。けれど、それでもいないよりはマシだから、結局一緒にいるのである。

「ねぇ米屋、抱きしめてって私が言ったらどうする?」

米屋の返事はなかった。しかし、すぐに繋がれた手が引っ張られて私は彼の中にすっぽりと収まる。コートに顔を埋めると、汗とシャンプーの混ざったにおいがした。これが米屋のにおいなんだ、とぼんやりと考える。しばらくお互いそのまま微動だにしなかった。米屋も私も喋らずに、時間だけが経過していく。自分から要望したものの、これをどう収集つけていいか分からない。さてどうしようか、と思い悩み始めたころ、やっと米屋が口を開いた。

「なぁ、これから俺の家行かね?」

予想外の言葉に耳を疑った。しかし、嫌な気持ちはしない。なんだかもう考えることが億劫になってしまって、私はその質問に頷いた。
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