十二月、師匠も走る季節になった。早いもので、今年も残すところ一ヶ月を切っている。なんだかんだ高校二年生という時間は、過ぎるのが早かった。入学して一年が経ち、学校にも慣れて先輩という地位を得た。後輩たちはみんな素直で可愛く、一つ上の先輩方はとても優しい。さらに、今年はまだ受験に備えなくていい年だからと同級生と遊び倒した。そして気がつけば十二月。これからは受験のために思い腰を上げなければならない。
夕方の教室は街と対比して閑散としている。部活のために学校に残る者が大半で、あとのみんなは家に帰るか街に遊びに行くかだ。いまはちょうどクリスマスの時期だから、色んなところで可愛いものがたくさん売っている。それを友達や彼氏彼女と買いに行くのだ。
しかし私には彼氏なんていないし、友達はみんな彼氏持ちで友達そっちのけ。したがって私は教室で一人残されることになる。しかしこのまま家に帰るのはとても癪だ。
音楽室からは吹奏楽部が練習する音が聞こえる。吹奏楽部の演奏するクリスマスソングが聴こえてきて、なんだか悲しくなった。私だけひとり身なんて。クリスマスなんて無くなればいいのに、と呟くと後ろから、ほんとだよな、と返事が聞こえた。驚いて振り返ってみると、クラスメイトの米屋がいた。

「……びっくりした」
「悪りぃ。ちょうど俺もおんなじこと思ってたからさ」
「米屋って彼女いなかったっけ?」
「あー…。別れた」

半年ほど前から米屋には彼女がいた。隣のクラスの女の子で、それなりに美人な子。米屋も容姿は整ってる方だったから、お似合いだねなんて友達と話していた記憶がある。それがまさか別れたとは驚きだ。でも別れた理由はなんとなく分からなくもない。米屋はボーダーに所属していてしかもA級だから、しょっちゅう呼び出されることが多い。きっとデートすることもままならなかったのだろうな。残念だったね、と言えば米屋は苦笑した。

「お互いひとり身かー。寂しいクリスマスになるね」
「まず世間が、クリスマスは恋人と過ごさなければならないってなってることがおかしいだろ」

開き直ったように米屋が言うものだから、思わず私は吹き出してしまった。確かに、世間の風潮はおかしい。アメリカではクリスマスは家族と過ごす日だったはずだ。私はクリスチャンでないからよく知らないけれど。

「なぁ名字、クリスマスひま?」
「それってイブ?それともクリスマス?」
「どっちも」
「……ひまだけど」
「じゃあどっか出かけね?」

これはデートのお誘いなのだろうか。一瞬そんなことが頭を過ったけれど、米屋はきっとなにも考えてないのだろう。恐らく、一人でクリスマスを過ごすのが寂しいから、適当に私を誘っただけだ。あんまり深く考えちゃいけないよなぁ、と思いながら、私は肯定の返事をした。

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