いま私は久しぶりに今吉くんとカフェで勉強をしている。この間のことがあって以来、一緒に勉強するのは少し遠慮していたんだけれど、今日は今吉くんに強引に連れて来られてしまったのだ。ちなみに今日は部活はないらしい。
彼がいま何を考えているのかは分からない。彼女がいるのに、今だって私と二人きりで勉強している。こんなところを見られたらただじゃ済まないんじゃないだろうか。
今吉くんは目の前でT大の過去問に手を付けている。流れるような速さで問題を解いていく姿はやっぱり格好良い。

「名字、ちゃんと勉強しぃや」
「してるよ」
「なんでバレる嘘吐くねん」

そんなこと言われたって勉強が手につくわけない。はぁ、とため息を吐いてシャーペンをノートに放り投げた。そんな私に今吉くんは呆れたような眼差しを投げかけてくる。

「悩みでもあるんか?」
「うーん…。それなりには?」
「言うてみい」
「………。今吉くんって、彼女いるの?」

ついに聞いてしまった。もしかしたら、もう一緒に勉強出来なくなってしまうかもしれないのに。でもはっきりさせておかなければならないだろう。私があの女の子の立場なら、今吉くんが他の女の子と一緒に勉強しているなんて嫌だ。確かに私は今吉くんが好きだけど、その女の子が嫌いなわけではない。だから、やっぱりはっきりさせておかなければいけないんだろう。

「彼女なんておらんよ」
「嘘。いるよ」
「なんやその断言。受験生で部活も忙しいのに、彼女なんて作る暇あるわけないやろ」

やっぱり一筋縄じゃいかないか。どうアプローチすれば今吉くんは肯定してくれるんだろうか。このままではあの女の子が可哀想すぎる。

「そういう名字はいないん?」
「いないよ」
「理由は?」
「今吉くんとおんなじ」

彼氏は、いない。好きな人ならば目の前にいるけれど。なんや、話が見えんなぁ。そう言って今吉くんはカラカラ笑う。そういえば今吉くんは腹黒だった。もしかしたら私の考えなんて全て読まれているのかもしれない。踊らされているのだろうか。でも私にはそれを確かめる術がなかった。

「やっぱりなんでもないよ。ありがとう」

ならば私も気付かないフリをしてそのままでいよう。せめて受験が終わるまでは。


(了)




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -