それからしばらく、私は家で勉強することにした。あんな不躾なことをしてしまった以上、もう彼とは顔を合わせられないと思ったからだ。それに家で勉強する習慣をつけておいた方がいいという理由もある。だから彼とはしばらく会わないと思っていた、のに。いま目の前に渦中の人はいる。

「あ、いつも図書館におる子やろ?」

学校から帰る途中、肩を叩かれて後ろを向けばそんな関西弁で話かけられた。私が甘かったのかもしれない。あの図書館を利用するということは、当然その近くに住んでいるというはずなのに。考えが足りていなかった。

「えっと、はい。そうですけど…」
「心配してたんよ?毎日図書館に来とったのに、いきなりけぇへんくなるから」
「や、それは、そのっ……」
「連絡先知らんからメールも出来へんかったしなぁ」

もう言葉が出なかった。何て言うか、こういう人だと思っていなかった。勉強してる時はあんなに知性的だったのに。今も知性的だけど、なんだかすごく怖い。いや、怖いという表現も違うかもしれない。表現出来ないような何かがある。たぶん、彼は腹黒い。

「なんやどないしたん?そんな変な顔して」
「えっ!?…いや、何でもない、です」
「敬語なんか使わなくてええよ。三年生やろ?」
「な、なんで知って…」
「この時期に毎日図書館に来るなんて受験生くらいやって」
「じゃあやっぱり…」
「ワシも受験生ってことや」

なんだかさっきからまともに喋っていない気がする。彼は頭が回るんだなぁ、と感心していると名前を聞かれた。そういえばまだお互いの自己紹介もしていなかった、とふと思う。

「ワシは今吉翔一。桐皇学園の三年やで。よろしゅう」
「私は名字名前だよ。よろしくね」




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