九月一日。夏休みが終わり、私たち学生は今日からまた学校に行く日々が始まった。課題の終わってない人、夏休みボケしてる人、いつもと変わらない人。誰にしたってこの日は来てほしくなかったんだろうな、という気持ちが今日一日で見てとれた。
私はといえば、夏休みが終わってしまったことに少なからずショックを受けていた。現在私は高校三年生、つまり受験生だ。嫌でも夏休みは勉強しなくちゃならなかったし、この夏休みで勝負がつくと言っても過言じゃない。中学に上がってからまともに勉強していなかったせいで、今年の夏は泣を見た(高校受験は推薦だったからほとんど勉強していない)。だからまだ夏休みは終わってほしくなかったのに。終わってしまったことに愚痴を言っても仕方がないことは分かってるんだけど、それでも言いたくなるのが受験生の性だと思う。

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バスが止まった。中央図書館前です、というアナウンスを聞いて私は立ち上がる。財布の中から定期を取り出して、改札に通してバスを降りた。
いつも私は学校が終わると図書館に行って勉強をする。学校にいると友達がいて中々勉強に手が付かないし、この図書館は家からも近いからだ。
図書館の中に入ると独特のにおいがした。幼稚園生だった頃から嗅ぎ慣れてる、懐かしいそれ。そのまま図書の方に足を向けてしまいそうになったけど、寸でのところで踏み止まる。そして階段から二階に上がった。ここは自習室のような場所で、静かにしていれば何をしていても構わないスペースだ。大抵は初老の方々の読書スペースになっている。幼い頃はここの雰囲気が怖くて怖くて仕方がなかったけど、今となっては私も立派なここの住人だ。
空いている席にカバンを置いて座る。それから筆箱とルーズリーフ、英語の過去問を取り出した。音を立てないようにそっと置いて勉強を始める。

「……………あ、」

どれくらい時間が経っただろう。なんとなくふと顔を上げると、少し離れたところに見知った顔がいた。黒髪に眼鏡、少し着崩した制服の男の子。名前も知らないけど、私と同じようにいつもここで勉強している人だ。多分あの制服は桐皇学園のものだと思う。友達の彼氏が確かそこの高校で、プリクラを見せてもらった覚えがあるから。
ボーッと彼を見ていると、不意に彼が参考書らしき本から顔を上げてこっちを見た。まさか見られるなんて思ってなかった私は、勢い良く顔を逸らす。

「…………」

びっくりした。もしかしたらそんなに見ていたんだろうか。色んな考えが頭の中をグルグル回る。もう勉強になんて集中出来なくて、机の上に広げていたモノ全部カバンに突っ込んで、飛び出すように図書館を後にした。




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