白薔薇の現実(ユピ→レア)

「はっ……はっ……」
息が荒く、浅い。
こんなことは滅多にない。
目の前の赤黒くぐちゃぐちゃになったものは、記憶を辿れば確か人間の男だったもの。
僕は……何をした?
「テル……?」
その声に振り向くと、狼狽した目でこちらを見るレアがいた。
言葉を紡ぐ小さな唇も、細かく震えている。
「あ……」
彼女の青ざめる顔に添えられた手には傷口から滴る血。
そうだ、そこにいた男に付けられた……。
「テル、大丈夫……?」
「……ごめん、レア……僕、また……」
「いいえ、いいのよ、テルは私を守ろうとしてやったんだもの……貴方が無事なら……いいの」
レアは僕に、そして彼女自身に言い聞かせるようにそう言った。
まだくらくらする。
急に力が入らなくなって、握っていたナイフがからりと地面に落ちた。
「テル……!」
「……ん、平気…………レアこそ、大丈夫?」
「こんなの、掠り傷だわ。……すぐ治るわ」
「傷が……残らないといいけど」
「何の心配をしてるのよ……」
そう言うと、レアは困ったように薄く笑った。
レアが笑顔なら、僕もそれでいい。
少しの安堵の所為か、足にまで力が入らなくなり、前に倒れかけた。
「……!」
それを咄嗟に、レアが受け止めてくれた。
「ちょっと……本当に大丈夫?」
「レア、血……付いちゃう」
「構わないわ。……もう、帰りましょう」
「…………うん」
レアはもう、この場に居たくないんだろうな。
僕は平気だけど、彼女は未だに人の死が苦手だから。
それが普通なのだろうと、頭では判っている。
でも僕は、何故か人の死を嫌えない。
そんな事を考えてぼーっとしていたら、レアに手を引かれて帰路に就くことになった。
帰り際、散々痛め付けた、死体とも言えないものが少し気になった。
でもどうせ、“お兄さん”が回収するんだろう。
明日には、ここらは元通り綺麗になる。
僕はそれよりも、レアの傷が元通り綺麗になってほしいと思った。

自覚はしている。
僕は、レアに対して何かおかしい。
レアが傷付くことは許せない。
レアを傷付ける奴は許さない。
その身に傷を付ける奴も、裏切って心を傷付ける奴も、同罪。
そこまでは、しっかりと認識できる。
でも、レアを実際傷付けられたと分かると、許さないって気持ちでいっぱいになって、くらくらぐるぐるして。
気が付くときは区々だけど、大概目の前に傷付けた奴の死体か肉塊が転がっている。
何があったか知るのはいつも事の後。
後で止めないとって思っても、その瞬間にはもう止められなくなっていて。

もしかして、僕は。
この所為でレアを“悲しい”って気持ちに、させてしまっているのかな。
そう思っても、何も変わりはしない。
例えそれが真実でも、僕がこうなるのは逃れ得ない現実だから。



*****

ユピちゃんが怒る、というのは正しい表現ではないけど
そういう風になるのはどんなときで、
どんな感じになるのだろう、というところから書きました。

とにもかくにも彼はレア様命。

似たようになるのは裏切り者に対して、なんだけど
そっちを第二章的な感じで書いたら上手く纏まらなかったので
そちらは別にして上手くできたらまた載せようと思います。


Thank you for reading!!

2014/02/09


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