怠惰、考察、願望。
隣をちら、と見る。
一心不乱にペンを取り、紙に書き込んでると思えば、お絵描きか。
反対を向けば一生懸命教科書を読み込む……振りをしたお昼寝タイム。
斜め前をみれば携帯を弄ってるのは見えるし。
あーあ、のどかだねえ、と欠伸を一つ。
俺は忘れかけてたよ。
今この時間は、所謂授業中。
今年定年のジジイが、よく聞き取れないようなボソボソした声で講義を続けている。
俺はどうでもよかったから静かに席をたった。
「高野、どうした」
「……小便してきまーっす」
ジジイはそうか、と言ってまた話し始めるのが聞こえた。
教室を出て、そのままトイレになど目もくれず屋上へ向かう。
「……便所なんて1限も2限も行ってきたっつーの」
誰にも聞かれない悪態。
まあつまり、1限も2限も適当な言い訳をして逃げたって訳で。
そろそろ進級怪しいかもな、俺。
とかちょっとの反省含みつつ、複数あるうち唯一開いている屋上へのドアを開く。
旧校舎から上ることのできる場所。
ドアを開けるとふわっと、心地よい風が髪をすく。
冷たいが俺を歓迎してるような、そんな空気。
足を進め、柵の張ってある端まで行く。
田舎の3階建て校舎の屋上だけあって、周りをよく見渡せる。
静かだが、風が街の昼前の喧騒を運んでくるような、無音でない静寂が俺の気に入り。
このずっと向こう……それこそ世界の果てまで。
その何処かでは誰かが泣いて、誰かが生まれて誰かが死んでる。
死んでる、けど、俺は平和。
俺以外の周りの奴等も大体平和。長閑。平穏。
くあっとまた欠伸が出る。
今俺が暇すぎて欠伸したこの場所でも、ずっと前には誰かが死んでる。
……実感湧かないけど。
世界の何処かでは、って言うと遠く感じる。
でも実際そんなに遠くないところで、今この瞬間、昔のここと同じように人が死んでる。
そう考えると……俺は。
「平和すぎるよ……畜生」
一番大きな欠伸。
今日はよく出る。
暇なんだな。
その場に座り込んで、柵にもたれかかり目を閉じる。
そのまますっと意識を手放して……。
「平和ボケした、馬鹿な国」
このままだと風邪引くかな。まあいっか。
目が覚めても、ここが、馬鹿な国であってくれ。
お題:馬鹿な国 制限時間:30分
Thank you for reading!!
2012/11/26 執筆
2016/05/05 公開
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