blue smile(カビ&マホ)
青いフードの耳を揺らし、マホロアはローアの甲板から空を眺めていた。
どこまでも透き通る青に、光る白が泳いで、緑の欠片が風に踊る。
優しい風景が広がる、ここはクッキーカントリー。
綺麗な星だなあ、とマホロアは感慨深く思っていた。
宇宙から見るとこのポップスターは、まるで宇宙中の希望を集めたように金色で、宇宙で一番美しく輝く星と言われるほど。
悪戯好きな道化師がボクのモノにしたいと言ったのも頷けるほどに美しい星なのだ。
けれど、マホロアが思った綺麗というのは、もっと違うものだった。
緑の命が至るところに芽吹いた大地。
星を地面に撒いたような砂。
太陽の光をきらきらと反射する海。
優しくて冷たい真っ白な雪。
空に近付いてゆけるあたたかな建造物。
友達が教えてくれた、この星の沢山の風光明媚な場所の数々。
場所だけでない。
今のような昼は太陽が眩しく照りつけて、夕方になると辺りは燃えるように赤く染まっていく。
夜が近付くと紫や紺色のベールが降りてきて、空に星のスパンコールが散りばめられる。
朝になれば露が陽に照らされて、空の星が地面に降りてきたよう。
たとえ雨が降ろうと、その一粒一粒は透明で水晶みたいで、止むと今度は虹の橋が空一杯に架かる。
何にしたって、何もかもが綺麗なのだ。
故郷にはこんなもの、なかった。
昼と夜はただの時間の区分であって、空が表情を変えることなどない。
暗い空、ちぎれちぎれの濃い雲に、青白く大きな月が冷たく照らすだけ。
あそこに居た頃は、空を見上げると何処と無く不安になるから、嫌いだった。
でも今は、ポップスターにいる今は、そんな空を眺めるのが好きだ。
気持ちよく澄んだ青い空。
優しい風が頬を撫でて、呼び掛けてくる。
「マホロア!」
なんて、居心地が良いのだろう。
「マホロアってば」
呼び掛けてくるのが本物の声だということに気が付くまで数秒。
はっ、とマホロアは我に返った。
「あっ、アレ……カービィ?」
「もうっ!マホロアったら全然返事してくれないんだから!ぼーっとしてどうしたの?」
春風の化身のようなカービィが、膨れ面で甲板に立っていた。
「ゴメンネェ、カービィ。ポップスターが綺麗だなあッテ思ってタラ、ぼーっトしちゃって」
「…………」
「……な、何ダヨォ」
カービィは膨れ面から、きょとんとした表情になったかと思えば、今度はにっこりと笑う。
「これが、ぼくの大好きなポップスターだよ。それをね、大好きなマホロアが気に入ってくれるなら、ぼくとっても嬉しいよ!」
「カービィ……」
一度はその大好きな星を傷付けんとしたマホロアを、カービィはそんなことを言いながら受け入れてしまうのだ。
カービィなら、その強さがあれば、あるいは……。
「まったク、ホンットお人好しダヨネェ」
「よくわかんないけど、それがぼくの取り柄?じゃないかな!」
「ククッその通りダヨォ」
お人好しはカービィに限ったことじゃない。
この星の住民は揃いも揃ってそんな気質を持ち合わせている。
そういったところも、マホロアがポップスターを好きな所以である。
勿論、今は真っ直ぐな意味で。
「で、カービィ、一体何の用ダィ?」
「そうだ!対決しようマホロア!もっとチャレンジステージ!!すぐ行こう!!!」
「い、今からカィ!?」
「うん!ぼく練習してきたから!!さあはやく!!」
「チョット待ってヨォ!」
カービィはきらきらと目を輝かせると、マホロアの背中を押してローア船内へと向かった。
背中を押されながら、真昼のポップスターの空を振り返る。
白い雲がたなびいて、光が揺蕩う浅葱の空。
これからそこに飛び込んで、ラストランドに向かう。
明日も明後日も飛び込んでいける。
カービィの急かす声を聞きながら、マホロアはフードの下でそっと微笑んだ。
*****
長 編 は ど う し た 。
すみませんプロットの雑さが祟って公開できるものが書けてません……
その代わりといってはなんですが、程よい長さのSSを。
一応長編の最後までの流れは考えてあるんですけどね……
マホちゃんにポップスターを気に入ってほしくて。
カービィちゃんも同じこと思ってそうで。
長編の後でこんな感じになりそうです。
お粗末でした。
Thanks for reading!
15/09/15
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