お母さんへ。

まず、ごめんなさい。
本当にごめんね。許さなくていいよ。いつもみたいに、怒鳴っていいよ。
そうされて当然の事をしたんだから。

これは遺書です。そのつもりで認めました。
長くなると思うけど、読んでね。


中学に入ってすぐ。
仲良くなった子に裏切られて、イジメは始まりました。
3年間、誰にも何も言わず、耐え続けました。
学校は休むなって言うから、行きたくなくてもあの人たちがいる場所へ通い続けて、辛くて辛くて、手首や足を切りました。お母さん気付いてたよね。
慰めとか、叱責とか、そういう言葉が何もなかったから、見捨てられたんだと思い全てを諦めました。

高校へ上がっても、完全には無くなりませんでした。わざわざ遠くの高校受験したのにね。なんにも変わりませんでした。
多分そのあたりからかな、自分が大嫌いになったの。ブサイクで、勉強も運動も出来なくて、なんの取り柄もない、存在するだけでみんなを不快にさせる、底辺のゴミ。自分のことそうやって思ってた。

大学では友だちもたくさん出来たし、バイトもサークルも楽しくて、変われるかと思った。
でも、やっぱりダメでした。ふとした瞬間、何笑ってんのって。何楽しんでんのって声が聞こえるの。お前にそんな資格ないだろって。周りの人みんなが、私の悪口を言っていて、私の事を嫌っていて、攻撃して来るんじゃないかって、そんな被害妄想に囚われていた。
就活に失敗した時、それが爆発しちゃってね。引き篭もってたのはそのせいです。あの時はごめんなさい。何も言わず八つ当たりばかりしてたね、ごめんね。卒業式の袴も、楽しみにしてくれてたのにごめんなさい。

叔母さんが仕事を紹介してくれなかったら、ずっと引き篭もりのままだったかもしれません。
本屋で働き始めて、やっと人生やり直せるって思えました。正直あまり繁盛してるお店じゃなかったけど、仕事をしてるって充実感が私を生かしていた。

なのに、何が悪かったんだろう。
気付いたら不眠症になっていました。食べた物をすぐ吐いて、体重がどんどん減っていきました。
病院行きなさいって言ってくれて、心療内科を受診して、眠れるようにも食べられるようにもなったら、閃いたの。
私はこのままじゃ一生変われないって。

休みの日、色んなところへ出掛けました。ひとりで。危ないって言われても無視して、色んなところへ。都内へも、東北へも関西へも、海外へも。
変わりたい一心でした。

よく、インドへ行ってから人生観変わったって人、いるじゃない?そんな感じ。
私にとってのそれは、案外と近いところにあったの。
居場所を知られたくないから詳細は伏せるけど、とても素敵な風景に出会った。そして目の前がひらける感じがした。ここが私の終着地なんだって。

お母さんは何度も私に言ってましたね。危ないから一人で出歩くな、暗くなったら帰って来い、って。日々繰り返されるそれを疎ましく思いましたが、娘の身を案じての言葉だとわかってます。いつも想ってくれてありがとう。
でもね、お母さん。通り魔や変質者に襲われなくても、車や電車に轢かれなくても、飛行機が墜落しなくても、治療困難な難病に侵されなくても。人は死ぬんだよ。

方法はまだ決めかねているけれど、最期はあの風景の一部になります。
この美しい地で今の私を終わらせて、そして生まれ変わるの。私がなりたかった私に、お母さんが求めていた私に。
また巡り会うことがあったら、その時はよろしくね。またお母さんの娘に生まれたいな。

家族と、お母さんの幸せを祈ってます。
今までありがとう。さようなら。




追伸:食器棚の、左側の真ん中の棚。あそこにあったノートは燃やしてしまいました。後で見つけた弟や妹が、お母さんを責めたりしたら可哀想だから……。お母さんを困らせてばかりで、失望させてばかりで、怒らせてばかりで、なんにも返せなくて、本当にごめんなさい。今度はもっといい娘になります。生んでくれてありがとう。ごめんなさい。


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