青ぞらいっぱいの無色な孔雀


「童虎よ、私は今日夢を見た」
「夢?」
「今日のような雲一つない青空に、たくさんの孔雀が舞っていた」
「それはまた突飛な」
「おかしいか」
「いいや、シオンらしいと思うぞ?孔雀の華やかさはおぬしに似ておるからな。空の青に映えてさぞかし美しいに違いない。……といっても、孔雀の実物を見たことはないのだがのう」
「ないのか?一度も?」
「昔は修行がてら世界中を飛び回ったものだが、孔雀はついぞ見なかった。261年も生きておきながら、身に付いたのは知識ばかりのようじゃ」
「……」
「百聞は一見に如かず、という言葉の通りかもしれん」
「……童虎」
「ん?」
「行くぞ」
「行く?」
「動物園にだ」
「またまた突飛な」
「実物を見たことがないというなら、今から見に行けばいいだけの話だ。そうすれば『知識だけ』ではなくなる」
「今すぐに行くのはやめにせんか?せめてこのお茶を飲んでから……」
「そうやって、時間はいくらでもあると思い続けて243年も経ってしまったろう。私も、お前も。だから今行くことに意味がある」
「おぬしがそのようなことを考えていたとは思わなかった」「で、行くのか行かないのか」
「もちろん行く。ちと行儀は悪いが、後片付けは他の者に頼むとするかのう」
「よし」


(動物園見学後)


「なるほど、確かにあの美しさはまたとないものじゃった。孔雀とシオンが似ていると評したのが間違いでなくてよかったわい」
「……童虎」
「気に障ったか」
「違う、むしろ逆だ。お前は時々、さも当たり前のように私を喜ばせる言葉を言う」
「おぬしが美しいのは本当ではないか」
「な、」
「……おや。シオンよ、上を見てみろ」
「な、なな、何だ」
「夕焼けじゃ。青空とはまた違った風情があって良い」
「……綺麗だな」
「綺麗じゃのう」


▼会話だけで261年組。ほのぼのまったり。
タイトルは宮沢賢治の詩集「春と修羅」の一編から。
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