二重螺旋の運命


☆矢でFateパロ。セイバー召喚あたり。
 衛宮士郎=アイオロス
 セイバー=サガ
 ランサー=デスマスク
雰囲気で読んでください





「よう兄さん、ちょっくら死んでくれねーか」

事もなげにそう言われ、心臓を一突きされたのがたった数時間前。あの時確実に死んだはずの俺はどういうわけかこうして生き延びて、再び俺を殺そうとするあの男から逃げようと必死になって走っている。
銀の髪に紅い瞳。長い槍を手にした死神。軽い口調で俺を殺すと言う男。あれはただの人間じゃない。でも人間でないなら一体何なのか。そもそもどうしてこんなことになってるんだ。逃げることで頭が一杯な俺は余計なことが考えられなかった。

「はぁっ、はぁっ、はっ、」

多少は魔術の心得があるといっても俺は所詮人間だ。人であってヒトならざる存在から逃げ切れるわけがない。自宅の蔵に逃げ込んだはいいものの、すぐに追い詰められた。

「俺相手にここまで逃げたのは評価してやるよ。でもここまでだ。お前個人に怨みはねぇが、見られたからには生かしちゃおけないんでね」
じりじりと距離を詰められる。身を切るような殺気で動けない。
「お前が蘇生した理由も聞いておきたいところだが……生憎と時間がない。さっさと死んでもらうぜ」
ゆっくりと振り下ろされる槍。標的は俺の心臓だ。数時間にも同じ槍が突き刺さった場所だった。服はその時やられた俺の血で染まっている。どうして生き返ったかなんて俺の方が知りたい。

体はみっともないくらい震えているというのに、頭の中は嫌に冷静だった。

(―――こんなところで、死ぬのか)

俺の命を奪おうとする槍の動きがスローモーションに見える。

(―――こんなところで、死にたくない)

神経がちりちりと焼き切れる。熱い。熱い。熱い。

(だって、こんなところで死んだら、俺は)

何かが、誰かが、俺の呼び声を待っている。


(俺は、『正義の味方』になれないじゃないか―――!)


刹那、目の前が真っ白になった。眩ゆい閃光が辺り一面を照らす。槍はまだ俺の心臓を刔っていない。いや、「まだ」ではなく、永遠に。
……なぜなら。

流れるような金の髪、金に映える紺碧の衣。
完璧なまでに美しく、何よりも気高く、誰よりも強い、絶対的な守護者が俺の前に立っていたからだった。

俺はただ呆然と、その背中を見つめていた。いや、見つめるというより、見とれていた。だって目が離せないんだ。美しいっていう表現はきっと「彼」にこそ使うべき言葉なんだろう。
不意に「彼」が振り向いた。目が合う。吸い込まれそうだった。「彼」は表情を変えずに口を開いた。総ての始まりを告げる言葉が紡がれる。


「―――問おう。貴方が、私のマスターか」



二重螺旋の運命

(もう後戻りはできない)



◆ずっとやりたかったFateパロ。セイバーちゃんの凛とした佇まいはサガに通じるものがある。
サガの衣装はセイバーちゃんの防具を男性用にフォルムチェンジものを想像してください。黄金聖衣にしようかとも思ったけど他との兼ね合いで没。髪は原作カラーの金です。

設定として、このFateパロと☆矢の世界は平行して存在しています。
アテナの盾の光を受けた直後、「サガ」は世界と契約し、生きたまま英霊として聖杯戦争に参加。彼の願いは、13年前の聖域を自分のいない状態に戻し、全てをやり直すこと。
…このあたりは元ネタを知らないと分からない部分なので割愛します。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -