散り逝く星は最期に祈る
・生まれ変わりネタ
・ロスとサガは大学生
「サガは、生まれ変わりって信じる?」
何の前触れもなく零れ落ちた疑問の言葉に、サガは驚くより先に溜息をついた。いきなり別な話を振って強引に話題を逸らすのは俺の常套手段だということを経験から知っているからだ。
「……そうやってごまかそうとしても無駄だぞ、ロス。レポートの締め切りは明日なのだろう?」
「分かってるけど」
「なら早く終わらせるんだ。そのために私が忙しい合間を縫って手伝ってやっているのに」
「だから分かってるって」
言い返したところで聞く耳を持たない。こうしてレポートを手伝ってもらってる俺が言うのもなんだけど、サガは生真面目すぎる。レポートの締め切りを過ぎても、融通を利かせてくれる教授ならいくらでもいる。そんなに厳しくならなくたってやっていけるんだ。
「……気になっただけだ。サガは生まれ変わりを信じてるか信じてないか」
負け惜しみのように小声で呟く。その言葉はサガにも届いていた。
「輪廻転生は仏教の考え方だろう」
相変わらず面白みのない答えだ。もう少し夢のある思考には行き着かないのかと落胆しかけて止めた。サガは元来そういう人間だ。
「あのさ、宗教とか関係なく、俺はサガ個人の考えが知りたいだけなんだけど」
「……」
珍しくサガが考え込んだ。そんな深い意味があって聞いたわけでもないのに。
「例えば、今よりもずっと前……次元も超えた先で、俺たちは会ったりしているかもしれないだろ?もしかしたら、俺が君に殺されたりしたかもしれない」
「なんだ、ロスは私に殺されたいのか」
「現在じゃなくて過去に在った『かもしれない』話だってば」
「仮定など無意味だ……と言ってもお前には通じないだろうな。まぁ、非現実的ではあるが考えてみると確かに面白い。こうして雑談しているのも何かしらの『縁』が働いていると考えることも可能だ」
サガは楽しそうに笑った。でも俺は笑わない。
(ほんとうなんだよ、サガ)
君は忘れてしまっているだろうけど。
(俺たちは、ずっと前に会ったことがある。愛し合ったことがある)
そして、君が俺という存在を『殺した』ことも。
(覚えているのは俺だけでいい)
君にあの日の記憶が残っていなくてよかった。
それは、あまりに悲しい記憶だったから。
散り逝く星は最期に祈る
(どうか、二人が心の底から笑い合える場所へ)
(そしていつか、ありったけの幸せを、君と)
死の間際に捧げられた彼の祈りは、遥かなる時をこえて成就する。