君は悲しいスケープゴート


闇は、彫刻のように美しい身体と人の心を惹きつける声を与えようと言いました。
少年はそんなものいらないと首を横に振りました。
しかし闇はにっこりと笑って、少年から美しい身体と声を与える代わりに母親を奪いました。
少年の大きな瞳から涙が一粒零れました。

闇は、生きるのに何一つ不自由がない恵まれた環境を与えようと言いました。
少年はそんなものいらないと叫びました。
しかし闇はますます笑みを深くして、恵まれた環境を与える代わりに父親からの愛情を奪いました。
少年はただ黙って泣くことしかできません。

闇は、誰からも愛される素晴らしい魅力を与えようと言いました。
少年はそんなものいらないと泣きながら懇願しました。
しかし闇は腹を抱えて笑いながら、誰からも愛される魅力を与える代わりに、誰かを愛するという感情を奪いました。
少年は心を失くして曖昧に笑いました。

誰からも愛される代わりに、誰も愛することはできない。「等価交換」と呼ぶには、あまりに理不尽で、あまりに一方的すぎる取り引き。それは祝福であり呪いでもありました。
どこかで闇の高らかな笑い声が響きます。
少年から青年へと成長した彼は、今日もまた薄っぺらな愛の言葉を囁くのです。


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