レントキ140字SS
★重ねた手のひら
「イッチー、体温低いね」
「レンこそ、音也に比べたら全然低いですよ」
「…今ここでイッキの名前を出すのかい?」
「あ…すみません」
いいよ別に、なんて笑ってみせたけど、きっと君は気付いてる。
緩く重ねていた手を、オレが今の言葉でぎゅっと強く握った、その意味を。
★可愛いにも程がある
拗ねた時なんか最高だね。
形の良い眉を吊り上げ、瞳は長い睫毛の下に雲隠れ。不機嫌そうに腕組みして、思わずキスしたくなるような可愛い唇をきゅっと引き結ぶ。
あれで怒ってるつもりなんだから驚きだ。
…写真?そんなもの無いよ。あの表情はオレの心のアルバムに永久保存済みだからね!
★あれはなかったことにして欲しい
オレの腕枕で寝てて思いっ切りよだれ垂らしたこと?
「違います」
次の日プール実習があるのにオレの背中に爪立てまくったこと?
「…それも、違います」
寝ぼけて枕元にあるオレの携帯からイッキに電話かけたこと?
「…もういいです…」
★もしもの話
「ねえイッチー。もしオレたちが、もっと早く会っていたら、」
すると彼は一瞬寂しそうな顔をして、その続きを言うのをやめた。
「…オレは、あいつに出会ってしまった。それだけはどうしようもない」
ただ、出会う順番が違っていただけの話。
「つくづく似てるよ、オレたちは」