音トキ140字SS


★泣いたり笑ったり

私の言葉ひとつで、音也はころころと表情を変える。
「私に触れないでください」
途端に手を引っ込めて、捨てられた子犬のような目で見つめてくる。だんだん可哀相に思えて、精一杯の譲歩。
「…唇なら、別ですが」
ぱっと明るくなる顔。支配されているのは私の方なのかもしれない。


★真昼だって構わない

トキヤは夜しかそういうことをしたくないみたいだけど、俺は朝だろうが昼だろうが関係ないんだ。
好きだと思ったその瞬間に行動に表さなくちゃ勿体ない気がして。
でもトキヤの前では絶対に言わないよ。だって俺はトキヤだけの「忠犬」だからね。


★そんなに焦らさないで

「トキヤ、」
「駄目です」
「え」
「キスはまだ待ってください」
「なんで」
「…その、」
「?」

 ちゅっ 

「…たまには私からキスしたい日もあるんです」
「……」
「音也?」
「…今の俺、世界一幸せかも…」


★鳴らない電話

「只今留守にしております」
これで何度目かな。もう覚えてないや。
鳴らない電話の理由はなんとなく分かってた。でも、いつか向こうから打ち明けてくれるまで言わないでおく。
だから早く素直になってねトキヤ、我慢するのも結構大変なんだからさ。


★どうしたら振り向いてくれる?

「ねえトキヤ、こっち向いて」
「嫌です」
「振り向いてくれたらキスしてあげる」
「な…」
「最近してなかったから、欲しいんでしょ?」
「……」
「知ってるよ」
「…あなたは、」
「何?」
「あなたは、ばかです…」
「うん、それも知ってる」


★どうしても言えない

自分が素直ではないということは周りからも散々言われているし自覚もしている。
ああ、たった2文字の為に、何故こんなにも悩まなければならないのだろう。
いとも簡単にそれを告げてしまえる彼を恨めしくすら思った。
私は今夜もまた、鏡の前で「す」の先を言う練習をする。


[ index > home > menu ]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -