ほぞを噛め!


「お願いします、レン」
「だめ。」
「そこをなんとか」
「だーめ。」
「…泣きますよ」
「え、泣き落とし?それってアリ?」
「そんな最終手段を使わなければならないほど追い詰められているんですよ!私は!」
「だからってその要求を受け入れるわけにはいかないよ、イッチー」

「よー!お前ら何引いた?」

一歩も退かぬ攻防戦を繰り広げる二人の間に割って入ったのは翔だった。
彼等は現在、バラエティ実習の最中。
今回の課題は『無茶振りに答えてちょーだい!』――各自がランダムにクジを引き、そこに書かれた無茶振りお題をこなさければならない。
無茶振りという前提がある以上、出されたお題には絶対服従だ。

そしてレンとトキヤが引いたお題は、
『カラオケの十八番のサビをアカペラで熱唱』
『女装して世界で一番可愛いポーズ』
……どちらが何を引いたかは明白である。

何としてもお題の遂行を避けたいトキヤは、こうしてレンと秘密裏にお題のトレードを要求したというわけだ。
しかしレンとてトキヤの引いた貧乏クジを代わりに請け負うわけにもいかず、せめぎあいが続いていた。
そんな中での翔の登場は、まさしく天の助けだった。

「良い所に来ました翔、私はあなたにぴったりのお題を引いたんです。是非とも交換しましょう」
「えっでも俺は自分のやつでいいし」
「そう言わないでさ、イッチーのお題はおチビちゃんにしかできないんだって!」
「レンまでどうしたんだよ……何か嫌な予感がするぜ。どうせアレだろ、女装とかそういう」
「そんなわけないでしょう」
「そうだよそんなわけないよ」
「お前ら絶対共犯だろ!?おい待て勝手にすり替えんなバカーーー!!!」

響き渡る絶叫。
この数十分後、人形のように可愛らしい女装男子がSクラスにお目見えになったのは言うまでもない。


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