Good morning,my honey


日曜日の午前9時。いつも8時に朝食を食べようと決めているのに、その時間はもうとっくに過ぎていた。にも関わらずまったく起きる様子がないというのはどういうことだろう。休日だからといっていつまでも寝させておくわけにはいかない。せっかく作った朝食も無駄になってしまう。朝食と昼食をまとめてとるなんていう不健康な生活は彼のためにもならないだろう。
ノック無しでNの寝室に入る。案の定Nは布団を抱き枕代わりにして、気持ちよさそうにすぴすぴと寝息を立てていた。可愛い。寝起きのNはいつもとは違う可愛さがある。思わず、もう少しこのまま寝させてあげようかと考えてしまうけど、駄目だ。ここでちゃんと起こしてやらなくては。

「N、朝だよ。ほら起きて」
「んー……」
肩を揺らして起こそうとすると、Nは眉をしかめて寝返りを打つ。
「もう9時過ぎてるんだけど?」
「まだあと5分……」

遅刻する人間の常套句と共にNはまた眠りの世界へと旅立とうとする。そうはさせるか。Nの頬をつねって、痛みによる覚醒を促した。しかしNは「いひゃいよトウヤ……」と呻くだけで目を開けようとはしなかった。よほど惰眠を貪りたいらしい。確かにその気持ちは分かるけど、Nと一緒に過ごせる時間が少なくなってほしくないんだ。夢の中でポケモンたちと戯れるのではなく、現実の世界で俺を見てもらいたい。
そう思うと一刻も早くNを夢から攫いたくなってしまった。……こうなったら仕方ない、強硬手段だ。

俺は無理矢理布団を引き剥がし、Nの両肩を強く掴んだ。そしてそのままNの唇を塞ぐ。
「――っ!?」
驚いたのは他でもないNだ。キスされた瞬間にその目は大きく見開かれた。寝起きの頭ではうまく思考回路が働かないのか、硬直したままされるがままになっている。
軽いリップ音を立てて唇が離れると、やっと状況を把握したらしいNが顔を真っ赤にして叫んだ。

「い、いいいいいいきなり何をするんだトウヤ!」
「何って、キスだよ。Nがいつまでも起きないから」
「だ、だからって朝から、キ、キスなんて」

Nはしどろもどろになって手で口を押さえた。眠気は綺麗さっぱり吹き飛んだみたいだった。この起こし方はかなり効果的だということが実証された。
真っ赤な顔を押さえて首を振るNを横目に、俺は明日から毎日この方法で起こすことにしようと思った。


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