[> 夕闇に包まれた頃君は笑った







赤く染まった空を眺めていた。
普段あまり開かれることのない部室の窓を開けて遠く、遠くを見つめていた。
部屋に入ってくる柔らかな風が二世の漆黒の髪を靡かせながら…


「空気の入れ替え?」

不意に後ろから声が聞こえた。振り返るとにこりと柔らかく微笑む三室がいた。
空が綺麗なんです、と答えるとまた空へと顔を向けた。

「こんなに何色も重なってる赤が広がっていて綺麗だけど俺はキライなんです」

「そうなの?」

「すぐ黒に飲み込まれてしまうんですよ。それってなんだか儚くないです?そういう儚く脆いものなんて虚しいだけな気がするんです」

そう言って弧を描いた口、細められた目と寄せられた眉。
"ほんとうは"何か言いたげだったろうけどそれが何なのか、何を意味していたのかはわからなかった。


ただ、


その笑顔が切なくて胸が痛んだ。


「すみません、余計な余談でしたね。帰るの遅くなっちゃいますね」

鞄に荷物を纏める二世を後ろから抱きしめると一瞬だけ体がピクリと動いた。
そして二世も三室の腕に手を添えると目を閉じた。

空は陽が沈み紺碧へと変わった時に二世と三室はキスをした。
お互いの顔は見えないけど"それを"忘れるように何度も口を重ねた。


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