君へ夢幻の感情を、 | ナノ


◎始まる朱雀の焔の鼓舞

「レッド君、ヤマブキのほうからノートが届いていますよ」

そのジョーイさんの一言で、僕は淀みかけていた思考を振り払い勢いよく顔をあげた。頭の上に乗っていたピカチュウに多少文句を言われてしまったがそれはまぁ気にしないでいこうと思う。

頭をあげた時と同じぐらいの勢いで腰をあげ、早足で受付のジョーイさんのもとへ向かう。そしてジョーイさんからここ数日通い詰めた目的であった日記をしっかりと両手て受け取った。

「…レッド君、」

「?」

「口が緩みまくっていますよ」

おっと危ない危ない。急いで口角を下げるとレッド君なのに珍しいわね、なんて言われてしまった。…ジョーイさんは僕のこと、どんな風にみてるんだよ。

「…で、そのノートは誰からなのかしら?」

「……」

「あ、もしかして女の子から?」

「む…」

へー、そうなんだー、あのレッド君がねぇとにやにやしながら見てくるジョーイさんにさっさと仕事にもどったら?と牽制すると真面目な顔に戻った後にそうねーと再びにやにやしながら仕事に戻っていった。…なんだか凄くムカつく。


リザードンに乗り、シロガネに戻る途中に待ちきれなくてノートを開いた。僕の書いたページの次のページに返事は書いてあった。


"ピカチュウさんへ

お返事、ありがとうございました。承諾してくださるのですね!ありがとうございます。とても嬉しいです。そこで1つ提案なのですが、敬語をなしで書きませんか?無理にとは言いませんがそうしていただけると助かります。あと、私のプロフィールを書いておきます。見ず知らずのわけわかんない人とノート交換なんて変ですからね。

リーフィア



敬語をなしに、かぁ。うん。こちらにしてみればとても嬉しいお願いだ。ありがたく乗らせて頂こう。それに、プロフィール。本名のほうは一応伏せておくがこちらも教えるならそちらも教えて欲しいと書いてある。…さて、どうしたものか。僕の名は教えて良いものなのだろうか。うーん。まぁ、名の件はグリーンに相談しよう、そうしよう。

とりあえず、あの寒くて白い命のようなシロガネ山に帰ろうか。



――――――何故僕は楽しみに返事を待ったのだろうか。この、理解の出来ない感情の名は何なのだろうか。



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