君へ夢幻の感情を、 | ナノ


◎細く繋がる玲瓏な綸

"リーフィアさんへ
こんにちは、リーフィアさん。僕はこのノートを拾ったピカチュウという者です。交換日記の件、喜んでお受け致したいと思います。ふつつかものですかよろしくお願いいたします。住所は少し難しいのでトキワのポケモンセンターに届けて下さい。話は通しておくので大丈夫だと思います。
ピカチュウ"






「うそ…返事が、届いた!?」



あの交換日記の返事が来たのは私が家に帰ってきてから一月後のことだった。もう諦めていたも同然だったので来たことにただただ驚いている状況だ。なんだかもう、嬉しすぎて手紙を持つ手が震えてきた。

手紙の内容はまさかの交換日記をしてもいいという肯定のものだった。なんだか涙が出そうだった。だが、返事の文は異様に堅苦しいようなもので少し苦笑いをこぼしてしまった。

この返事をみる限り、使いなれていなさそうなのだ。きっと男の子なのだろう。文字が力強く、濃い。それなのにお受け致したいとか話は通しておくなどのところで漢字を何度も間違っていてとても目立っている。ぐちゃぐちゃっとインクを被せられた下の文字はどんな間違いをしてしまったのだろうか。今では伺う隙もなさそうだが。






「あ、カノン。返事が届いたの?」

「うん。これから返事、書いてくる」

「そう。良かったわね」


母と簡単な会話をし、自室までかけ上がる。簡単な会話しかしなかったのは仲が悪いわけではなく、返事をどう書くかで頭がいっぱいだったからだ。

椅子に座りボールペンを持つ。どうしようか、何を書こうか。そんな思考から悩みは始まり、ついにはピカチュウという彼はどんな人なのだろう、ピカチュウが好きなのだろうか、ふつつかものだなんて嫁入りみたいだな、簡単な漢字を間違うだなんてあまり字を書かない人なのだろうかなど、まったく関係のないことにまで発展してしまっていた。


そんなこんなで気が付けば机に向かい二時間以上の時間がたってしまっていた。これはヤバイと思い、いつの間にか手から話してしまったボールペンを再び手に持つ。ピカチュウさんへ、と書き込んだ後、暫く悩み文を書き込む。どうせなら敬語などの堅苦しいものはなくしたほうが書きやすいかもと思い、そうしないかということも書き込んでおいた。


ピカチュウさんはいったいどんな内容を返してくれるんだろう。とても、わくわくする。きっとこれが友達への第一歩なんだろうなぁ。とりあえず明日朝一で、ポケモンセンターの配達システムに頼もうと思う。



――――きっとこれが、君と私との永久に切れない縁になるんだ。



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