君へ夢幻の感情を、 | ナノ


◎微かに溶け出す希望

ここ、シロガネ山で1,2年に1度ほどしか起こらないというほどの大きな雪崩が起きた。白の涙が地を抉るような、大きな雪崩。幸いにも下敷きになったポケモンはおらず、ピカチュウたちは安堵の表情を浮かべていた。その顔がちょっと可愛かったのは、自分だけの秘密にしておこうと思う。


雪崩で崩れた雪たちを、生活に支障をきたさないぐらいにリザードンの協力を得ながらとかしてゆく。どうせとかした所でまた雪は積もるのだからあまり意味がない気がするが気にしたら負けな気がしたので気にしないことにする。とかしている間にも雪が酷くなってゆく。ただでさえ半袖で寒いのに。寒さに震えながらもリザードンが出している炎に手をかざし、暖をとる。ぽっかぽかまでとはいかなかったが、結構暖まることが出来た気がした。







あらかたとかし終わり、挑戦者が来ないかと外でぼけらぁとしていると、他の手持ちポケモンと遊んでいたはずのピカチュウが割れた風船つきの袋を持ってきた。身ぶり手振りの説明から察するに、どうやらそれは雪崩で崩れた雪の下の方に埋まっていたらしく、見つけたので持ってきたということだった。ただのゴミをなんで僕まで持ってきたんだろう、という疑問をいだきながらも受けり、口がきつく縛ってあった袋を悴む指であけた。ようやくあけたその袋の中には、雪により冷やされていた小さなノートが入っていた。


何が書いてあるのかよほど気になったらしく、ピカチュウは早く開けるようにと僕を急かす。はいはい、と軽くあしらいながら僕はその要望にこたえ、ノートを開けた。

そこに書いてあったのは、交換日記相手を探している、というものだった。何故に今の時代に交換日記なのだろう。膝の上にちゃっかりと乗っているピカチュウも首をかしげた。下の方まで読めば、しっかりと住所まで書いてあった。住んでいる所はカントー地方のヤマブキシティらしい。名前のところには何故かリーフィアと書いてあった。


ノートを閉じ、袋に戻そうとするとピカチュウが僕の服の裾を掴んだ。つぶらな瞳でこちらをみる意味を要約すると返事は書かないの?だそうだ。そりゃ僕だって返事は書こうと思ったが、肝心のペンがないのだ。これでは意味がない。その旨を伝え、無理だと言えばピカチュウはどこからともなく万年筆を一本差し出した。…お前、いったい何処に隠していやがった。


…まぁとりあえずペンも手に入ったので、閉じたノートを再び開いた。交換日記といったら、いったい何を書けばいいのだろう。そういうのは女の子がやるものだと思っていたのでよく分からないことを忘れていた。数十分悩んだあげく思い付いたものは、洞窟に入ってから書こうという当たり前のことだった。




中に入ってから、また何を書けばいいのかと悩む。早くしろとバシバシ尻尾で叩いてくるピカチュウは案外せっかちなのかもしれない。…気をを取り直して万年筆でリーフィアさんへ、とノートに書き込む。…何にも思い付かばない。はぁ、と溜め息を漏らすと手持ちポケモンの皆さんがさっさと書けと言わんばかりのじと目でこちらを見ていた。


おい、お前ら何処からわいた。










結局最後まで書ききることが出来たのは、それから二時間ほどたった頃だった。もちろん名前のところはピカチュウにしておいた。…といっても書いた行数はページの半分にも満たなかったのだが。まぁ交換日記も少ないながら書き終ったことだしトキワまで食料補充も兼ねて下りるか、と思い腰を上げた。




――――なんで僕は交換日記なんて書こうと思ったのだろう。そんなことをしても、この環境は、目線は、世界は、変わらないはずなのに。



戻る


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -