◎ 自らの足跡と先ほどまで行っていたバトルの爪痕が残る雪に身を委ねてみた。バトル後の火照った身体がいい具合に冷やされていく。熱が出たときに氷枕と冷えぴたを使った時みたいだ。とても気持ちがいい。 なんだか空が近く見える気がする、と天に右手を翳してみた。やはり届かない。少しの間、その状態のままで休憩していると右と左、両方からぽすんと雪が沈む音がした。視界の端に見える色からして左がリーフィアとピカチュウ、そして右がレッドさんだ。 きゃっきゃと仲良く転がりながら遊ぶ二匹はとても楽しそうだ。一緒に遊んでいる訳でもないのに、なんだかとても可愛らしい光景だ。 「ねえ、カノン」 「何でしょうか」 不意に右から声をかけられた。いままでノート状でしか会話をしていなかったからか、名前を呼ばれるとなんだかむず痒い。 「あのさ」 会話が切れる。束の間の静けさは永遠を感じさせるほど長く感じられた。 「また、戦いにきて」 小さな声が、この静かな空間に響いた。 「勿論」 即答で返す。あの伝説様からいわれて断る理由もない。むしろありがとうございますだ。 だがそんなことを私が思っているとは露知らず、レッドさんはありがとうと小さく笑い、ピカチュウにも通じていたのかぴっかあ!と元気に尻尾を振ってもらった。それを見て、リーフィアも嬉しそうに見えた気がする。 * カノンへ 来週の金曜日、いつもの時間に待ってる。条件は特になし。6匹でお願い。いい返事待ってる。 レッド 「おいレッド」 「…なに?」 「なんで久しぶりに戦いにきたのに交換日記書いてるんだよ!!」 「書きたいからだけど」 「あ、そうか…じゃなくて!!しかもなんだよこの内容!!!!」 「…?」 「いつもってなんだよ!!俺とはそんな戦わねえ癖にそいつとはよく戦ってんのかよ!?」 「?うん。そうだけど」 「…はぁ」 「…なにさ」 「……いや、もういい。」 「…そう。」 「てか珍しいな。お前がそんなに女に固執するなんて」 「…?」 「気付いてなかったのかよ…はぁ。…てかさ」 「なに?」 「こんな毎日毎週ノート送りあってるって、なんか付き合いたてのカップルみたいだな…ってレッド?」 「……」 「ちょっレッド顔真っ赤っか…って痛い痛い!!そこ弁慶の泣き所だからな!?照れ隠しでもキツい!!!!」 「……」 「(初な奴だなあ…)」 * 「えっりかちゃぁぁああああん!!」 「まあ!そんなに頬を緩ませて…なにかいいことでも?」 「そうなの!!あのね、レッドさんから対戦のお誘い来たの!!」 「あら、そう…ってこの前も誘われてましたわよね?」 「うんそれはそうなんだけど!!すっごく嬉しいじゃない!!ああもう眠れないよ!!」 「一人の世界に入り込むほど嬉しいなんて…やはりカノン、彼のこと…」 「わああああ違う違う!!!!違うの!!!!違うからその先を言わないでええ!!」 「あらまあそんなに必死になって。随分分かりやすいですわね!」 「否定はできないけど空しくなるからやめて!!ていうかそんなに生き生きした顔しないで!!なんだか余りにも表情にでてるから止めたくても止められなくなるから!!!!」 「(暫くはこれで楽しめそうですわね!)」 歩み始めた二人へ いつの日か祝福を (20131028) 戻る |