さよなら、さよなら。




「えっと、きょうのもうひょうひきすうはっと・・・」

4匹だったかな?なんてカゲボウズに聞けば元気よく返事をしてくれた。

うん。やっぱりカゲボウズは可愛いよね!

でもなんでかあいつは気持ち悪いポケモンだなんて罵倒してくる。

「ほんっといみわかんない」

なんて一人言を溢せば、カゲボウズは首を傾げた。

気にしなくていいよ、と声をかけると抱っこをせがむので、お腹の前で抱いてやった。

今日はトキワの森にしようか!と声をかけ、歩む足を早めた。



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「よっし!おしごとしゅーりょー!」

捕獲からの感染が終るまで、だいぶ時間がかかってしまったのか、気がつけば回りは暗くなっていた。

何時なんだろう、と時計を確認すると、まだ2時間ほどしかたっていなかった。

では、なぜ暗いのだろう?

なんて考えていると頬に冷たい雫が当たった。

この辺に水ポケモンはいないはず…
ってことは

「あめ?」

うん!というように首をふるカゲボウズ。

しまった…今日はお姉さんの天気予報見損ねた…。
あいつが来たからさっさと研究所、出てきちゃったんだよね…

「…とりあえず、雨宿りしよっか?」

そう声をかけると、カゲボウズは私をせかすように木の下へ進んだ。

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雨宿りから、かれこれ一時間というところだろうか。

カゲボウズと一緒だから不満はないのだが、ひとつだけあげるのならば

「…あめ、ひどくなってない?」

だね、と返事をしたようにカゲボウズこちらに近づいてきた。

よしよし、と撫でてやると嬉しそうに鳴く。

でも、流石の雨で寒かったようで身震いをした。ボールに戻るかと思い、取り出すといやいやとでもいうように首をふるので着ていたパーカーの中に入れた。

そのとき、あたりがピカッと光った。

続いてドンッという音。

「うわあ、かみなりなってきちゃった…」

大きな音にビックリするカゲボウズ。
そんなところもやっぱ可愛いです。

「…じゃなくて!かみなりがなったってことは、ここは危ないから早く出るよ!」

そう声をかけ、カゲボウズをボールに戻し出口へ急いだ。



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やばい、これはやばい

何がかというと

「まよった…」

そう、トキワの森は迷いの森。
複雑な地形に迷っちゃいました。

こういうときは無駄に動かない方がいいはずだけど、木がたくさんある森で止まってて感電なんてしたらとんでもない。

「急ぐしかないか…」

雨がどんどん酷くなり、音がなる感覚がどんどん短くなる中、とにかく走った。



自分の草を踏む足音が雨の音にかきけされていく。

靴下はもう、雨でびしょびしょになってしまった。

それでも、走る。


やがて、木があまりない広い道が見えた。

出口だ!!そう思い進んだ。
でもそこに出て見えたのは


「うわぁ…がけですかい」


通常じゃこない道の先の崖でした。

「どうしよう、これ…。ここならきもすくなないし、かみなりがとまるまでまつしかないかなあ」

諦めて、ここで待つことにします。

それから数分。

雨の音しか聞こえなかった中、小さな足音が聞こえてきた。

その音はだんだんと近づいてくる。

おじいちゃんが来てくれた!!助かったーと内心喜んでいると、木々の隙間から見えたのは赤い傘と



「…グリーンくん。」


「なんだよ、まいごかよ?きもちわりーやつ」



栗頭のあいつでした。



「…うん。まよった」

「バカじゃねーの?」

まあ、助けてやらないことはねーけど、なんて素敵なことをさらっというあいつ。

なんだよ、普通にいいやつだったよ!なんて感動も束の間、そのかわり!と大きな声で思考を遮る声がした。

…そのかわり?

何か条件があるのか。なんだろう。
研究所から出てけとかかな。まあいいけど
なんて考える。

そしてあいつはしれっといい放った。

「おまえがあのきもちわりーポケモンをがけからすてたらな!!」

ほら!すてろよ!かえりてーんだろ?なんて笑いながら言ってくる。

絶対、嫌だ。
カゲボウズを捨ててたまるもんか。

「そんなこと、するわけないじゃない」

そう言い返せば

「おまえはよわむしからできないんだろ!!じゃあおれがやってやるよ!」

ほらかしやがれ!なんて先程よりも大きな声で笑う。
それと同時に、私のバッグの中のボールを漁る。

「いやっ!やめてよっ!!」

「じゃますんなよ!!」

「いたっ!!」

ガンッと鈍い音が響く。

足を蹴られたのだ。

あまりの痛さに地面にうずくまると、そのすきにとあいつは私のバッグを再び漁る。

「やめてっ!!」

「あった!きもちわりーやつのボールだ!!」

ついに見つけてしまった。

「やめて!それにさわらないで!!」

「ほーら、とりかえしてみやがれ!」

やめて、やめてと泣き叫ぶ。
そんなのはおかまいなしのあいつは、ほーらとんでけ!と投げるふりをして私を恐怖のどん底へつきおとす。


そのときだった。


「グリーン!!パスカ!!いたら返事をするのじゃ!!」

おじいちゃんの声だ!!
良かった、助かったと思ったやさき

「げっ!!じーさんっ!!…ってうわあ!!」

ちょうど投げるふりをしようとしていたあいつの手から、カゲボウズの入ったボールが飛んだのだ。


「カゲボウズ!!!!」


すべてがスローモーションに見てた。

痛む足を無理矢理動かし無我夢中で走り、必死に手を伸ばす。


「あとちょっと…!」


指先がボールに触れる。


「…よしっ!!とれたっ!!」

「パスカ!!危ない!!」

「…えっ?」

おじいちゃんが叫んだ理由を探す。
カゲボウズも助けられたし大丈夫なはず…


…あ、ここ"崖"だった


それを気づいたときにはもう遅かった。


身体は重力に従って下に落ちた。


恐怖で消える意識の間際に見たものは


おじいちゃんの慌てた顔と




あいつの絶望した顔でした。
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